東京スカイツリーは鉄骨でできていますが、人が訪れる展望台や機械室にはコンクリートの床があります。
それぞれの高さまでコンクリートを運び、その場で打設して造りますが、そこでも品質の確保と効率アップの工夫をしています。
今回は、未知の高さでのコンクリートの打設方法についてご紹介します。
超高層ビルなどの床は、全体の重量を軽くするため、一般的なコンクリートよりも軽い軽量コンクリートが用いられています。東京スカイツリーも同様に、展望台や機械室などの床は軽量コンクリートを用いた鉄筋コンクリートでできています。
一般的なビルの場合、コンクリートを上の階へ運ぶには、地上からポンプで圧送します。未知の高さに床を造る東京スカイツリーでは、さまざまな条件を考慮しコンクリートの打設方法を計画しました。
東京スカイツリーでのコンクリートの打設条件を考慮した結果、「1 クレーンによる荷揚げ」と「2 荷揚げ場所からのポンプ圧送」を組み合わせる計画にしました。しかし、実施に当たりいくつかの問題点がありました。
3つの装置を使用することで、地上の生コン車から上空の圧送ポンプに、あたかも直接横付けして荷下ろしするような状態を保てるよう工夫しています。
コンクリートの打設は地上から350m、450mの高さにある展望台の屋上に運び、そこから各打設場所へとポンプで圧送します。
生コン車からの積み込みから、展望台床の打設までの手順を示します(天望デッキの場合)。
地上の荷取りヤードで生コン車から「コンクリートホッパー」と呼ばれる荷揚げ用の容器にコンクリートを積み込みます。その後、コンクリートホッパーを立て起こしてから吊り上げます。
運搬したコンクリートを滞らせないための工夫「大容量コンクリートホッパー」
積み込み容量5m3の大容量コンクリートホッパーを使用し、一回で生コン車一台分のコンクリートを一度に荷揚げします。これにより生コン車に残ったコンクリートが次の荷揚げを待つ間に硬化してしまうリスクを減らしています。また、クレーンの荷揚げ回数を削減し効率よくコンクリートが打設できるメリットもあります。
クレーンで高さ350m、450mの展望台の屋上までコンクリートホッパーを運びます。
地上からコンクリートホッパーに入れて運ばれたコンクリートは、展望台の屋上に設置した「攪伴機(アジテーター)付きストック用投入機」に投入します。投入後、空になったコンクリートホッパーは次の荷揚げに向かいます。
硬化を防ぐための工夫「攪伴機付きストック用投入機」
コンクリートホッパーで各展望台屋上へ運ばれるコンクリートは、荷揚げ中も硬化が進みます。
また、圧送は配管が閉塞しないよう速さを調節しながら継続して行われます。
そこで、クレーンによる荷揚げ作業に圧送作業が左右されないようにコンクリートホッパーと同容量のコンクリートをストックし、攪伴機能を併せ持つことでストック中の硬化を防ぎます。
攪伴機付きストック用投入機から打設場所までは配管を設置して、圧送ポンプでコンクリートを送ります。
このように、クレーンによる運搬とポンプ圧送による打設を適切に組み合わせることで、品質確保と効率アップを図り、未知の高さでのコンクリートの打設を可能にしました。
東京スカイツリーのつくり方大公開(上級編)
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タワーの鉄骨を積み上げる 未知の高さに吊り上げる
特殊な構造を積み上げる
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アンテナ用鉄塔を引き上げる
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