ゲイン塔の頂部は、ゲイン塔の揺れを抑える制振装置(TMD)を設置する制振機械室となるため、一般部分(直径約6m)よりも外径が太くなります。
一般部分は地上で組み上げ、塔体内部の空洞をリフトアップさせますが、頂部はこの空洞よりも太いため、リフトアップする方法では構築できません。
では、ゲイン塔頂部はどのように組み立てるのか、制振装置の概要とともに、構築ステップをご紹介しましょう。
アンテナの送信性能を確保するために
高さ497m以上のゲイン塔には、地上デジタル放送のTVをはじめとする公共性の高い放送用アンテナが取り付けられます。ゲイン塔全体の揺れを抑えることを主な目的として、ゲイン塔頂部に制振装置(TMD)が取り付けられる設計となっているのです。
【現場ブログ】最頂部の制振装置、現場に到着(2010.11.19付)
タイミングをずらして揺れを低減
制振装置の「TMD」とはTuned Mass Damperの略語です。ゲイン塔全体の揺れとは遅れた周期で揺れるように調整された(= Tuned)重り(=Mass)が、タイミングをずらして揺れることでゲイン塔全体の揺れを低減する(=Damper)システムです。
このシステムは「倒立振子型」と呼ばれる装置で、振り子を逆さまの状態にしたシンプルなものです。重りを下に吊るすのではなく、重りをオイルダンパーとバネの上に載せ、ゲイン塔と重りの揺れの周期の違いを利用します。
2基の制振装置が作動
制振機械室は2階建てになっていて、2基のTMDがそれぞれの階に設置されます。1基だけでも必要な能力を備えていますが、片方の装置がメンテナンスなどで作動しないときでも制振能力を維持できるよう、2基設置しています。通常は2基とも作動します。
屋根の上には避雷針があり、その頂部がタワー最高点の634mとなります。
ゲイン塔を塔体内部の空洞でリフトアップしている間に、制振機械室を地上497mの塔体頂部で組み立て、頂部制振装置も設置してしまいます。ゲイン塔が空洞内を上がって497mに到達したら、ゲイン塔の先端と制振機械室をドッキングさせ、634mの高さへとリフトアップします。
組み立てが完了した塔体頂部(497m)で制振機械室を組み、頂部制振装置(TMD)を設置します。
【現場ブログ】総重量は約100トン。制振装置が塔体の最頂部へ(2010.11.25付)
リフトアップで上昇してきたゲイン塔と、塔体頂部に仮置きしておいた制振機械室をドッキングさせます。この段階で塔体の一部となり、高さ500mを超えて511mとなります。
ゲイン塔と制振機械室のドッキング部分の溶接や塗装が終わったら、高さ634mをめざしてリフトアップを再開します。
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