高さ634mの東京スカイツリーの工事では、高さが高くなるにつれ、作業場所がどんどん高くなっていきます。作業する場所に作業員が素早く移動できないと効率よく工事が進みません。
そこで、本設のエレベーターが完成するまでの工事期間中に設置する工事用エレベーターに特別な対策を施しました。
工事用エレベーターは、人以外にもクレーンで上げることができない仕上げ用の材料などを運ぶ揚重(ようじゅう)にも活躍できるように工夫しています。
東京スカイツリーの工事用エレベーターには、いまだかつてない高さと建物形状の特殊性から、計画上配慮すべきさまざまなポイントがあります。
工事用エレベーターを設置するには、上下に移動するための垂直なタテ穴が必要です。
東京スカイツリーの場合、塔体鉄骨部分にタテ穴が確保できないので、完成後に使用する本設エレベーターのシャフトを利用して、一時的に工事用エレベーターを設置しました。
しかし、本設エレベーターシャフトに工事用エレベーターを設置すると、工事用エレベーターを解体しないと本設エレベーターが設置できません。
工事を進めるうえで、常に運搬用の昇降施設が必要なため、工事用エレベーターと本設エレベーターのやりくりが難しく、どのシャフトに配置するかなどの綿密な計画が必要となります。
展望台以外の途中の高さにフロアーが少ない東京スカイツリーでは、仕上げ用の材料も少なく、荷揚げよりも作業員の輸送が重要です。
地上では朝礼が終わった後、30分~1時間程度で各作業員が作業場所にたどり着けるように輸送能力を検討し、工事用エレベーターの機種(定員、昇降速度)や台数を選定します。
また、作業員の輸送は混雑するピークタイムが決まっているので、運行計画でその時間帯に材料揚重用の工事用エレベーターを手伝わせることで、全体の輸送能力を賄えるように計画しています。
既成品の工事用エレベーターの最大揚程は200m~250m程度です。
第2展望台まで上がれる機械を開発することもできますが、450mを上り下りするには途中階の停止を減らしても、1時間に3~4回しか輸送することができません。輸送効率を上げるため、途中で乗り継ぎする計画にしました。
工事用エレベーターの乗り継ぎ計画 例:高さ150m地点の平面
工事用エレベーターで運ぶ資材は最長4m
一般的に、工事用エレベーターで運ぶ材料の長さは最長で4mです。そのため、既製品の工事用エレベーターのカゴ(搬機)は横幅が4m以上あり、通常は横倒しにした材料を台車に載せてエレベーターのカゴへ積み降ろしします。
しかし、東京スカイツリーのシャフトは、この寸法の既製品の工事用エレベーターが納まりません。そこで、エレベーターのカゴの形状と材料の積み方に工夫をしました。
長方形から台形へ。横置きから縦置きへ
一度により多くの資材が揚重できるように、カゴの平面形状をシャフトに納まりかつ最大になるよう台形のカゴを特注しました。しかもこの工夫をしても床の大きさは長い方で2.9mしかありません。そこで、さらに4mの材料を積むため、カゴの天井を高くして、縦に積めるように改造しています。
第1展望台は仕上げ用の材料が多く、その中でも長尺の材料が多くあります。
長尺の材料は、シャフト内に設置した材料揚重用エレベーターに横積みできず揚重効率が良くないので、タワークレーンと工事用エレベーター(第1展望台の材料揚重用)の連携による搬入ルートも用意しました。
第1展望台内の材料揚重用エレベーターは、第1展望台の床部分に仮設の開口を開け、長辺長さ4.5mの機種を使用します。一度に多くの材料を台車に横積みしたままエレベーターのカゴに積み降ろしできるため、揚重の効率化が図れます。
本設エレベーターが完成すると、建物全体が完成していなくても官庁検査を受けることにより仮に使用することができます。本設エレベーターが動き始めると工事用エレベーターを撤去し、シャフトに本設エレベーターを組み始めることができます。
このやりくりを上手く行い、竣工までにすべての本設エレベーターが動くように計画します。
東京スカイツリーのつくり方大公開(上級編)
タワーを支える杭をつくる
タワーの足元をつくる
タワーの鉄骨を積み上げる 未知の高さに吊り上げる
特殊な構造を積み上げる
人や材料を効率よく上げる
高精度に積み上げる
上空の気象条件に備える
アンテナ用鉄塔を引き上げる
タワーの心柱をつくる |