複雑な曲面を持つ建築物の熱負荷シミュレーションツール「ParaLoad」を開発しました

熱負荷計算を自動化して意匠性と環境負荷低減を両立

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、複雑な曲面を持つ建築物の正確な熱負荷計算を可能とするシミュレーションツール「ParaLoad」を開発しました。これにより、従来正確な計算が困難だった曲面形状の建築物を含め、あらゆる形状の建築物のエネルギー効率を最適化し、環境負荷を低減することができます。

近年、3次元で設計を行うBIMの普及により、意匠性を重視した複雑な曲面を持った建築物を設計するため、アルゴリズミックデザイン(※1)と呼ばれる設計手法が注目され、その設計条件となるアルゴリズムをグラフィカルに編集できる「Grasshopper(※2)」というツールが広く利用されています。

しかし、アルゴリズミックデザインを用いて設計されたような複雑な曲面を持つ建築物は、熱負荷を精度良く計算できず、空調などの設備容量の設計が過大になりかねないといった課題がありました。

今回、大林組は空気調和・衛生工学会方式の熱負荷シミュレーションプログラムである「NewHASP/ACLD(※3)」との連携により、Grasshopperで作成した複雑な曲面を持つ建築物の熱負荷を正確に計算するシミュレーションツールParaLoadを開発しました。

Grasshopperで敷地の緯度・経度や方位などの条件を設定のうえ建築物の3次元モデルを作成すると、NewHASP/ACLDでの熱負荷計算に必要となる入力データが自動作成され、それらをNewHASP/ACLDに反映させることで即座に熱負荷計算を行うことができます。建築物の形状とエネルギー効率とを併せて確認しながら設計検討を進めることができます。

曲面建築の外観
   

ParaLoadの主な特長は以下のとおりです。    

複雑な曲面を持つ建築物に対して最適な空調設計が可能

従来、複雑な曲面を持つ建築物の熱負荷計算は、曲面を平面とみなした多面体で近似し、熱負荷計算を行っていました。そのため、正確な熱負荷計算との乖離(かいり)を勘案して設備容量に余裕を持たせて設計することがあり、建築物のエネルギー効率を最適化することができませんでした。

ParaLoadは、建築物を構成する曲面を、サーフェス(表面)ごとに細かなメッシュ(頂点、辺、面の集合)に分割し、各メッシュの面積・方位角・傾斜角から、NewHASP/ACLDの計算に必要となる入力データ(窓データなど)を作成します。このデータに基づきNewHASP/ACLDで算出された計算結果を用いることで、最適な空調設計が可能となり環境負荷の低減が図れます。

ParaLoad システムフロー

熱負荷シミュレーションの自動実行により設計検討を効率化

ParaLoadとGrasshopper、NewHASP/ACLDはそれぞれ連携しており、Grasshopperで建築物の空調条件、室内条件など熱負荷計算に必要な項目を設定のうえ3次元モデルを作成すると、ParaLoadが方位データと窓データなどNewHASP/ACLD用の入力データを自動で作成し、NewHASP/ACLD側で熱負荷シミュレーションを実行します。

設計者は、設計した建築物のエネルギー効率を即時かつ容易に確認できるため、意匠性と同時に環境負荷低減効果を検討することが可能です。また、特定のパラメーター(例えばねじれ角など)以外の形状などを固定のうえ、パラメーターを変更していくことで、最もエネルギー効率が高い建物形状をデザインすることも可能です。

大林組は、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の達成に欠かせない省エネ手法の導入効果を、BIMとNewHASP/ACLDを連携させることでより早く正確に予測する「NewHASP入出力支援システム」や、複数の高精度環境シミュレーションプログラムと連携して高度な設計を実現する「エコシミュレ」など、さまざまなシステムからなる「熱負荷シミュレーション総合プラットフォーム」を構築しています。

今後はこのプラットフォームにParaloadを追加して活用していく予定です。建築物の設計業務において、これらのツールやプラットフォームを積極的に活用し、高性能な環境共生建築を提案していくことで、お客様の多様なニーズにお応えするとともに、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

熱負荷シミュレーション総合プラットフォーム(概念図)
  • ※1 アルゴリズミックデザイン
    デザインのコンセプトや表現法を、数式やプログラミング言語などによって一連の手順(アルゴリズム)にまとめ、これを実行することによって、形態や配置などを創出するデザイン手法。建築においては建築物全体に関わる平面形状やねじれ角のほか、窓やルーバーといった構成要素を含めて、一定の数式など特定のルールに基づいてアルゴリズム化し、その実行により複雑な曲面などを作り出す設計手法を指す
  • ※2 Grasshopper
    3DモデリングツールRhinocerosのプラグインのモデリング支援ツール。共にRobert McNeel & Associatesの登録商標
  • ※3 NewHASP/ACLD
    空気調和・衛生工学会で開発された動的熱負荷計算プログラム

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。