株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、2011年に耐久性が高く、強度も高い海水練りコンクリートを開発し、適用用途を拡大しています。今般、港湾構造物での適用に続き、舗装工事にも適用しました。今後、さらに多くの用途への適用をめざし提案していきます。
大林組は、将来国内で必要となる放射性廃棄物処分場に関する研究開発の中で、海外における岩塩層を利用した処分場の事例に着目し、人工岩塩層の実現を目的として2010年から海水練りコンクリートの開発を進めてきました。
岩塩層は水密性が非常に高い地層ですが、日本には岩塩層が存在しません。岩塩層と同等以上の性能を有する人工岩塩層を造るため、コンクリートの練り混ぜ水に海水を使用し、さらに、高炉スラグ、フライアッシュなどの産業副産物や海水用特殊混和剤を使用することによって、強度、遮水性、耐久性の高い海水練りコンクリートを開発、2013年には実用化しました。
この技術は、2013年に一般財団法人沿岸技術研究センターの港湾関連民間技術の確認審査・評価証を取得し、さらに2015年には、第17回国土技術開発賞最優秀賞を受賞しています。
海水練りコンクリートは、東日本大震災の港湾復興工事で、港湾用ブロックとして初適用しましたが、今般、新たにJFEスチール株式会社 東日本製鉄所千葉地区構内の舗装コンクリートとして適用しました。
通常の舗装工事とコストは同等ながら、海水練りコンクリートは海水や海水用特殊混和剤を使用することで強度が早期に発現するため、通行止めとする期間を短縮できるうえ、長期強度も増加するため耐摩耗性が向上するなどの効果が期待できます。これに加え、結合材として高炉スラグ微粉末、骨材として同製鉄所から発生した製鋼スラグを使用することで、産業副産物の有効利用も図っています。
耐久性が高い海水練りコンクリートは、無筋コンクリートはもちろん、エポキシ樹脂塗鉄筋などを補強材として使用することで、鉄筋コンクリート構造へも適用できます。さらに、将来は樹脂製短繊維(ファイバー)や軽量で高強度な炭素繊維ロッドを使用することで、100年以上の耐久性を確保できる見込みです。今後、開発目的であった人工岩塩層としての用途も踏まえ
離島や海外などの真水の入手が困難な地域での活用
河川・港湾施設、舗装など、初期強度や長期強度を必要とする構造物の築造
護岸、水路、構造物基礎など、鉄筋や各種補強材料を用いたコンクリート構造物への適用
除染廃棄物中間貯蔵施設や放射性廃棄物処分場など遮水性の求められる構造物への適用
火山島の砂防ダムなど現地発生土を利用したソイルセメントを使用する防災施設の築造
地耐力・遮水性向上、液状化対策などを目的とした、セメントを使用した地盤改良
などへの展開を図っていきます。また、海水の有効成分だけを抽出することで、海岸から遠方の地域での砂防施設の整備事業などにも本技術を活用していきます。
将来、人口増加や気候変動に伴う水資源の枯渇が問題とされています。世界的に都市沿岸部への人口集中が見込まれる中、海水練りコンクリート技術を用いることで、海水の有効利用により国内外のインフラ施設や地球温暖化に伴い必要となっている各種防災施設の整備を進められるとともに、材料が現地で容易に調達できることから建設事業で発生するCO2の削減や建設コストの縮減が図れます。大林組は今後も海水練りコンクリート技術を、さまざまな用途で積極的に提案していきます。
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014
プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。
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