土木学会では、土木工学の進歩や土木技術者の資質向上を図り、社会の発展に寄与するために、さまざまな活動を展開しています。土木学会賞は、1920年に土木賞として設立しされ、毎年、国内外の優れた土木事業や新技術、さらには土木工学、土木事業に多大な貢献があった方々を表彰しています。
5月15日、平成28年度の土木学会賞が発表され、賞設立以来最多となる100件の受賞が決まりました。大林組は、技術賞や環境賞、技術開発賞など5つの分野で表彰されました。
【平成28年度土木学会賞 主な受賞】
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技術賞
世界初2函体(かんたい)同時沈設による大型ニューマチックケーソン施工(千住関屋ポンプ所建設工事)
千住関屋ポンプ所は、局地的豪雨の発生などで流出量が増大している東京・千住地域の雨水を、一時貯留後隅田川に放流するための施設です。
工事では、水槽部となるケーソン(函体)を鉄筋コンクリートで構築しながら、自重沈下させるニューマチックケーソン工法で、2つの函体を地下50mに同時に沈設しました。
間隔2mで近接する2函体の間の地盤を、高圧水で緩めて沈下に対する抵抗力を削減し、綿密な計測管理を行ったことで、世界で初めて巨大凾体の同時沈設を実現しました。
今回の工事は、今後の大型ケーソン沈設技術の発展に大きく寄与するとして技術賞に選定されました。
新たなシールドトンネル拡幅技術を用いた分合流部の建設(横浜北トンネル馬場出入口分合流部)
首都高速道路横羽線と第三京浜道路を結ぶ横浜環状北線(延長約8.2km)の馬場出入口の分岐・合流部を、住宅地直下では初となる、非開削での大断面地中拡幅工事によって建設したものです。
最大深さ54mの大深度地下での工事となるため、地上から開削せずに本体トンネル内部から拡幅。トンネル断面を拡径し、パイプルーフを押し込む新たな地中拡幅技術で分合流部を建設しました。
大断面拡大シールド技術と従来技術とを駆使した、他に類を見ないシールドトンネル拡幅技術は、新たな地下空間創造の技術を確立したと高く評価され、技術賞に選定されました。
東北地方における高耐久RC床版の施工
東北地方では、凍害や凍結防止剤の散布による塩害でコンクリート床版の早期劣化が深刻化していることから、復興支援道路整備における道路橋の耐久性向上への取り組みを、産官学協働で行いました。
コンクリートを塩害から守るフライアッシュなどの産業副産物を積極的に利用し、コンクリート内の空気量を増やして膨張を緩和したり、防錆(ぼうせい)鉄筋を使用したりするなどして、材料が劣化しにくい複数の対策を講じました。
この取り組みは、今後の道路橋の長寿命化に向けた、インフラメンテナンスの合理化に大きく貢献するものとして評価され、技術賞に選定されました。
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環境賞
木片コンクリートによる斜面の緑化対策技術の研究
木材チップをセメントで固化した木片コンクリート(チップクリート)を植生基盤として用いることで、今まで困難だった酸性土壌斜面の緑化を実現しました。
チップクリートは、斜面被覆材として十分な強度を持ち、セメント成分による酸性水の中和作用、高い排水性から永続的な緑化促進効果が確認されています。
また、木材を利用した緑化工法は、間伐材や建設廃材の利用にもつながることから、酸性土壌斜面の緑化、木材有効利用という2つの面で環境保全に資する点が高く評価され、環境賞に選定されました。
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技術開発賞
常温硬化型 超高強度繊維補強コンクリート(スリムクリート)工法の開発
スリムクリート工法は、通常のコンクリートと比べて極めて高い強度と耐久性を持つ超高強度繊維補強コンクリートを用いて構造物を構築する工法です。
従来の超高強度繊維補強コンクリートは養生設備の整った工場で生産するため、製造規模や運搬方法に制約がありました。しかし、スリムクリートは現場での打設・養生が可能で、施工規模や施工条件の制約を大幅に軽減。あらゆる形状や規模の構造物に対応でき、適用が拡大しています。
2012年には土木学会の技術評価証を取得。すでに多くの工事に適用されています。構造物の老朽化対策、i-Constructionにおける軽量・高耐久性のPCa部材の製造などにも期待できることから、技術開発賞に選ばれました。
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国際活動奨励賞
川崎隆(大林組 ダッカ3橋JV工事事務所副所長)
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技術功労賞
登坂弘光(大林組 名古屋駅中央西JV工事事務所所長)
大林組は、安心して暮らせる国づくりを通して社会の発展に寄与していくために、土木技術のさらなる開発に取り組んでまいります。