常温で固まるスリムクリートが土木学会の技術評価証を取得

現場で施工できるメリットを活かし超高強度繊維補強コンクリートの可能性を拡大

サステナビリティ

3月15日、大林組と宇部興産の共同開発による超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート」が、土木学会から技術評価証を取得しました。

土木学会の技術評価制度は、省資源、省エネ、コスト削減など社会のニーズに貢献する技術や、国際競争力や国際貢献などグローバル化に対応する技術を正当に評価し、わが国の土木技術の発展に寄与するために設けられたものです。

土木学会の山本会長から技術評価証を授与される大林組執行役員の汐川孝土木学会の山本会長(左)から技術評価証を授与される大林組執行役員の汐川孝(右)

従来の超高強度繊維補強コンクリートは、熱養生が必要なため設備の整った工場での製造が必要でした。スリムクリートは、常温での養生が可能なため現場で施工でき、そのうえ一般的なコンクリートの8倍以上の強度(圧縮強度180N/mm2以上、引張強度8.8N/mm2以上)があります。

スリムクリートの特性や耐久性が土木学会の指針(※1)で示されている水準と同等で、指針に準拠して設計ができること、また施工マニュアルが適切であることが確認され、今回の技術評価となりました。

※1 超高強度繊維補強コンクリートの設計・施工指針(案)

工場生産の枠を超え、あらゆる形状や規模の建造物に適用

スリムクリートは、これまで屋内ブリッジや港湾施設のリニューアルなどで使用されてきました。

建造物の規模や条件に合わせて現場で施工できるとともに、軽量化による運搬・建設機械の簡素化でコスト削減が図られるなど、今回の技術評価証の取得により、さまざまな建造物への適用が期待されます。

大林組は、今後も暮らしの安全を守るため、新たな高強度材料の開発を進め、安心して暮らせる街づくりに貢献してまいります。

スリムクリートによる大林技術研究所の室内ブリッジ

スリムクリートを適用した大林組技術研究所内のブリッジ。強度が非常に高いので鉄筋が不要となり重量を一般的なコンクリートに比べて約65%に低減できました

常温で固まる超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート」

スリムクリートは鉄筋がなくても建造物ができる超高強度繊維補強コンクリートです。一般的な超高強度繊維補強コンクリートは固まるまで高温を維持するため工場で作る必要があります。スリムクリートは常温で固まるので使う場所で施工できます。強度が非常に高いので鉄筋が不要で、通常の鉄筋コンクリートよりもスリムで軽い建造物が造れます。

大林組技術研究所ブリッジの製造過程
(動画再生時間:10秒)

型枠にスリムクリートを注ぎ込むと、スリムクリートはゆっくりと流れて隅々まで行きわたり、常温で28日間で固まり所定の強度を発揮します

スリムクリートと一般的なコンクリートとの圧縮強度比較

スリムクリートは、セメントに対する水の比率を通常の4分の1にして緻密性を高めることで、強度は通常コンクリートの約8倍になりました。

緻密になったことで、中性化や塩害の影響をほとんど受けない材料となり、100年以上の耐久性を十分に確保できると評価しています