株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)と株式会社加藤建設(本社:愛知県海部郡、社長:加藤徹)は、傾斜を付けたソイルセメント壁を土留め壁とする「地盤改良体方式の斜め土留め工法」を共同開発しました。
一般的に、地下の浅い部分に道路や水路などを設ける場合には、開削工事を行い、掘削した地山が崩れないように土留め壁を造成します。従来、深さが約3m以上の開削工事では、鉛直に設置する土留め壁と支保工(切梁、中間杭、グラウンドアンカーなど)で地山の崩れを防いでいましたが、大林組は、土留め壁を傾斜させることで支保工が不要となる斜め土留め工法を開発し2010年に初めて適用しました。
切梁や中間杭などの支保工を用いる従来工法
支保工が不要の斜め土留め工法
斜め土留め工法には、地下水位が高い場合に適用する「鋼矢板方式」と地下水位が低い場合に適用する「親杭横矢板方式」がありますが、それぞれ鋼矢板や親杭を地山に傾斜させて打ち込むために、土留め壁の背面側に重機を配置しなければならず、施工スペースの確保が必要でした。
今回新たに開発した地盤改良体方式の斜め土留め工法では、地盤改良工法の一つであるパワーブレンダー工法(※1)により傾斜10度のソイルセメント壁を造成します。既存の斜め土留め工法と異なり、本工法では支保工を用いる従来工法と同様に掘削側に施工機械を配置して施工できるため、土留め壁の背面側の施工スペースが不要となります。また、直線部の土留め壁だけでなく、コーナー部の土留め壁も連続して造成できることから止水性に優れ、地下水位が高い場合にも有効な工法です。
大林組は、地盤改良体方式の斜め土留め工法を富山新港火力発電所LNG1号機新設工事(発注者:北陸電力株式会社、施工場所:富山県射水市)のうち、ボックスカルバートを設置する冷排水路工事および電気ケーブルトレンチ工事に適用しており、土留め工事の工期を従来工法に比べ約25%短縮しました。
地盤改良体方式の斜め土留め工法の主な特長は以下のとおりです。
- 土留め工事の工期短縮に加え躯体の品質が向上
本工法では、掘削部分において支保工が不要となります。切梁や中間杭などの搬入や設置の必要がないため、従来の支保工を用いる工法に比べ土留め工事の工期を大幅に短縮することが可能となり、コストも最大で約10%削減できます。また、既存の斜め土留め工法と同様に、ボックスカルバートの構築に当たってはコンクリートの打ち継ぎ回数を減らせることから、躯体の品質が向上します。
- 狭い敷地や既設の構造物が近接する場所でも施工が可能
既存の斜め土留め工法においては、土留め壁の背面側に施工機械と土留め材料を配置するスペースが必要ですが、地盤改良体方式においては、施工機械(改造型のバックホウ)を土留め壁の掘削側に配置するため、狭い敷地や既設の構造物が近接している場所でも施工が可能です。
- 土留め壁のコーナー部において止水のための閉合が不要
鋼矢板方式の斜め土留め工法では、止水のために土留め壁のコーナー部を地盤改良などにより閉合する必要がありますが、本工法は、山留め壁のソイルセメントが自然に固化し止水性能を発揮するため地盤改良などは不要です。
斜め土留め工法は支保工が不要であるため、プレキャスト製品を容易に短時間で設置できるという利点があり、近年、i-Constructionの推進に伴い適用件数が増えているプレキャスト工法において、工事の生産性を高めることができます。大林組と加藤建設は、積極的に斜め土留め工法をさまざまな工事に提案し、より多くの土留め工事に適用することでさらなる工期の短縮、低コスト化を図ります。
以上
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大林組 CSR室広報部広報第一課
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