株式会社大林組(東京都港区、社長:白石達)は、株式会社シェルター(山形県山形市、社長:木村一義)との技術協力により、初の汎用木材による大スパン2時間耐火木造技術「オメガウッド(耐火)」を開発しました。
2010年に「公共建築物等木材利用促進法」が施行されて以降、木材の積極的な利用が推奨されています。大林組は、従前から木造技術に取り組んできましたが、同法の施行を受け、木造大スパン架構のローコスト化技術、オメガウッドなどを開発し、施工実績を重ねてきました。
日本の森林資源はもはや地産地消では消化しきれない状態であり、建設需要の多い都市部で木材を利用する「地産都消」が必要であるとも言われています。加えて、近年木質の意匠性が好まれ、都心部でも「木の見える木造」のニーズが高まってきています。
しかし、建築基準法では、防火地域内で100m²以上の建物を建てる場合などに耐火性能が必要とされ、5~14階建ての建物を建てる場合は2時間耐火構造とする必要があることから、都市部で中大規模の木造を建設するためには、耐火の技術が必要となります。また、中大規模建築に求められる大スパン架構や、さらに木を見せる耐火木造は、部材製作の複雑さからコストが割高となる課題がありました。
そこで大林組は、これまで準耐火構造まで対応していたオメガウッドに、燃え止まり層(耐火層)として石膏ボード、燃えしろ層として表面に木材を設けることで、2時間耐火木造をローコストに実現する技術、オメガウッド(耐火)を開発しました。木質感のある意匠性に優れた外観を有し、シンプルな3層構成となっています。
オメガウッド(耐火)の主な特長は以下のとおりです。
- 2時間耐火木造を実現
従来のオメガウッドは、準耐火までの木造建築を対象としていましたが、今回、燃えしろ層・燃え止まり層(耐火層)を設けることで、2時間耐火までの木造建築が可能となりました。これは、日本住宅・木材技術センター(東京都江東区)で構造加力試験を実施し、かつ大林組技術研究所(東京都清瀬市)で載荷加熱試験により性能を確認しています。オメガウッド(耐火)は1時間耐火の仕様も整備しているため、建築物に求められる性能に応じて選択することが可能です。
- 木のぬくもりを魅せる建築
表面には燃えしろ層として木材の層を設けたことで、意匠性に優れた木のぬくもりを感じられる外観を可能としました。一定の条件を満たせばどんな樹種でも使用することができるため、地域の特産材、例えば木曽のヒノキや青森のヒバなど、デザインに合わせて自由に樹種を選ぶことができます。
- ローコスト・大スパンの耐火木造を実現
木造での大スパン架構を建設するためには、断面幅(厚さ)および断面せい(高さ)の大きな木材が必要です。これまで、大断面の木材を製作するためには、単板を接着した単板積層材(LVL)などを、さらに複数接着した「2次接着による木材の一体化」が必要で、専用の機械と技術を持つ限られた工場で製作されるため割高になっていました。オメガウッドは、汎用材のLVLをビスなどのつづり材で一体化することにより、2次接着をせずに大断面木材の製作を可能とする技術です。2次接着の工場を経由しないことで、コストダウンを図るとともに納期も短縮されます。
今回、開発したオメガウッド(耐火)は、このメリットを活かしつつ、2時間耐火を実現するために設けた燃え止まり層(耐火層)、燃えしろ層もシンプルな3層構成としたため、従来の2次接着などが必要な耐火木造技術に対して約60%のコスト削減が可能となります。また、一般的な鉄骨造で必要な耐火被覆や仕上げ材も不要であることから、総合的には鉄骨造と同等のコストにできる可能性もあります。
今回開発のオメガウッド(耐火)により、中大規模の事務所や商業施設をはじめ、医療福祉施設、教育施設など耐火構造が必要となる幅広い用途で、「木の見える耐火木造」をローコストに実現することができます。
大林組は、都心にも中大規模木造の建設を可能とすることで、「公共建築物等木材利用促進法」の目的である木材利用の促進に貢献するとともに、お客様の多様なニーズに応えてまいります。
【載荷加熱試験】
【構造加力試験】
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014
プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。