特殊なセメント系材料を用いた3Dプリンターを開発

型枠を使わずにさまざまな形状の部材を正確に自動製造します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、特殊なセメント系材料を用いて、型枠を使わずに建築物や土木構造物の部材をさまざまな形状で自動製造できる3Dプリンターを開発しました。

セメント系材料を用いた3Dプリンター

セメント系材料を用いた3Dプリンター

アーチ状のブリッジ

アーチ状のブリッジ

近年、石膏(せっこう)や樹脂などをインクとしてさまざまな物を積層造形する、3Dプリンターの利用が広がっていますが、建設業界では建築物の模型製作などに使われる程度で、実際の建築物や土木構造物を対象とするまでには至っていません。

一般的に建築物や土木構造物にはコンクリートをはじめ多くのセメント系材料を用いますが、これらは十分な強度に達するまでに一定の時間を要することから、所定の形状と寸法を保つための型枠が必要となるなど、3Dプリンターの利用には多くの課題がありました。

今回開発した3Dプリンターは、ロボットアームからインクを吐出し積層造形することで、建築物や土木構造物の部材を自動で製造します。

インクは、デンカ株式会社(本社:東京都中央区、社長:山本学)が開発した特殊なセメント系材料で、建築物や土木構造物に必要な強度と耐久性を持つとともに、吐出直後でも形状が崩れることなく維持される性質があることから、型枠を使わずに部材を製造することができます。

今回の開発により、これまでセメント系材料で製造する場合に非常に多くの時間と労力を要した、曲面や中空などさまざまな形状の部材を自動で製造することが可能となります。

大林組では、実際にこの3Dプリンターを使って中空の曲面形状のモルタルブロックを複製製造する実験を行い、これらを組み合わせたアーチ状のブリッジを製作することに成功しました。

3Dプリンターでモルタルブロックを製造する様子を動画でご覧いただけます

(動画再生時間:1分6秒)

セメント系材料を用いた3Dプリンターの特長は以下のとおりです。

  1. 型枠を使用せずにさまざまな形状の部材を製造

    一般的なセメント系材料を使う場合には、十分な強度に達するまでに一定の時間を要するため型枠の設置が必要でしたが、今回使用するセメント系材料にはチキソトロピー性(※1)があることから、型枠を必要としません。材料の吐出直後でも、形状が崩れることなく下層と一体化して短時間で固まるため、型枠の組み立て、解体に多くの時間と労力がかかる曲面や中空形状のほか、さまざまな形状の部材を、型枠を使わずに容易に製造することが可能です。

    今後は、さまざまなデザインに対応して積層造形できる3Dプリンターの特長を活かして、バイオミメティクス(※2)による軽くて強い骨のような構造物や形態最適化(※3)に基づく構造物の製造への応用を検討します。

  2. オフラインティーチングにより自動で正確に材料を積層

    今回開発した3Dプリンターには、7軸のロボットアームの先端に材料を吐出するノズルが取り付けられています。ノズルはオフラインティーチング(※4)により、一定の速度で所定の経路を正確に移動するように制御されていることから、自動で正確に材料を積層造形することができます。今回の実験では中空のある、幅500mm×奥行250mm×高さ500mmのモルタルブロックを約15分で製造できました。

大林組は、次世代技術の一つとして今後も3Dプリンター活用に向けた研究開発を進めていきます。お客様の多様なニーズに応えるため、強度や耐久性を兼ね備えた、さまざまな形状の構造物を製造できるように改良を重ね、将来の実用化をめざします。

アーチ状ブリッジの設置状況

アーチ状ブリッジの設置状況

※1 チキソトロピー性
圧力をかけられた状態では流動性があり、圧力から解放されると粘性が生じ、その後固くなり形状が維持される性質。今回の3Dプリンターに用いるセメント系材料は、圧力がかかる吐出口までは流動性を保ち、吐出されると短時間で固まる

※2 バイオミメティクス
軽量で丈夫な骨の構造を構造物などに応用するなど、生物の構造を模倣した設計方法

※3 形態最適化
荷重条件に対して最適な形態を解析する手法

※4 オフラインティーチング
ロボットへの動作の教示(ティーチング)を、実機で行わずに作業プログラムを入力したコンピュータなどで行う手法。作業内容がモデル化されている場合、実機で教示を行うよりも作業の正確性の面で有利

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014

 

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。