株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、ポリビニルブチラール樹脂(以下 PVB樹脂)および硅砂(※1)を用いた高性能な防食鉄筋「サンドグリップバー」を開発しました。
近年、インフラなどの耐久性向上を目的に、塩害(※2)による鋼材腐食(※3)防止の観点から、海水の影響を受ける沿岸地域や、冬季に凍結防止剤(※4)が散布される寒冷地域および山岳地域のコンクリート構造物を対象として、防食性の高い鉄筋を使用することが求められています。
従来の防食鉄筋には主にエポキシ樹脂塗装鉄筋が使用されていますが、普通鉄筋よりもコンクリートとの付着強度が低下するため、重ね継手(※5)の重ね合わせ長さを通常より長くとる必要がありました。また、曲げ加工や組み立て時の衝撃によって、エポキシ樹脂塗膜を損傷する場合があることから、コンクリート打ち込み前に損傷部を補修する必要がありました。
サンドグリップバー
エポキシ樹脂塗装鉄筋
サンドグリップバーは、エポキシ樹脂よりも伸び率の高いPVB樹脂で鉄筋を被覆し、さらにその周囲に硅砂を付着させることで、付着強度の低下や補修などの課題を解決した新しい防食鉄筋です。株式会社川熱(本社:神奈川県綾瀬市)、朝日工業株式会社(本社:東京都豊島区)と共同開発したもので、価格はエポキシ樹脂塗装鉄筋と同等以下となります。また、「PVB-S被覆鉄筋」という名称で2016年9月に一般財団法人沿岸技術研究センターの「港湾関連民間技術の確認審査・評価事業」の評価を取得しています(評価証番号第16001号)。
サンドグリップバーの特長は以下のとおりです。
- エポキシ樹脂塗装鉄筋と同等の防食性を確保
防食鉄筋として一般的なエポキシ樹脂塗装鉄筋は、鉄筋をエポキシ樹脂で被覆することで塩分などの劣化因子から鉄筋を保護し、鋼材腐食を防止します。その耐久性(塩化物イオン透過性、耐薬品性など)に関する品質規格は、土木学会が発表している「エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いる鉄筋コンクリートの設計施工指針」に定められています。サンドグリップバーは当該指針の品質規格を満たしており、エポキシ樹脂塗装鉄筋と同等の防食性を確保しています。
- コンクリートとの付着強度向上により、重ね継手の延長不要
エポキシ樹脂塗装鉄筋の場合、表面が滑らかであるためコンクリートとの付着強度が低く、すべりやすい状態です。そのため、鉄筋をつなぎ合わせる際、引張強度を確保するために設ける重ね継手の重ね合わせ長さを、普通鉄筋と比べて18%以上長くする必要があります。一方、サンドグリップバーは鉄筋周囲に付着させた硅砂の効果により表面が粗くなり、コンクリートとの付着強度が増加します。
実証試験では、鉄筋からコンクリートがすべり始めるときの付着応力度がエポキシ樹脂塗装鉄筋の約2.8倍と大幅に増加すること、また鉄筋がコンクリートから完全に分離する際に発揮する最大付着応力度(※5)が普通鉄筋より10%増加することを確認しています。このため、サンドグリップバーは重ね継手の延長が不要となり、従来のエポキシ樹脂塗装鉄筋よりも鉄筋の総量を2~6%低減することができます。
- 塗膜の損傷を抑制
PVB樹脂は、エポキシ樹脂に比べて伸び率が大きく、変形に対する追従性が高い樹脂です。これにより、曲げ加工や組み立て時の衝撃による塗膜の損傷が生じにくく、補修に要する手間を低減でき、工期短縮にもつながります。
塩害対策が必要な地域の海洋構造物などにサンドグリップバーを用いることで、付着強度の低下や補修の課題を解決した鉄筋コンクリート構造物を造ることが可能となりました。また、大林組がすでに開発している「海水練り・海砂コンクリート」には、真水や良質な陸砂(※7)の確保が困難な場所でも現地で容易に原材料を調達できる利点がありますが、同コンクリートとサンドグリップバーを組み合わせることで、材料運搬に係る環境負荷を低減し、低コストかつ信頼性の高い鉄筋コンクリート構造物が実現できます。
大林組は今後、サンドグリップバーを積極的に展開し、鉄筋コンクリート構造物の長寿命化、低コスト化に貢献していきます。
以上
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大林組 CSR室広報部広報第一課
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