株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、市街地に建つ高層建物の周りの非定常な風の流れをコンピューターによって解析し、風圧による建物の揺れや風応答などの風荷重を予測する「数値風洞 エアロダイナ」を開発しました。
これまで強風時の構造物の耐風安全性に関する評価は、縮尺した建物模型に風を作用させた風洞実験により行われてきました。実験では建物に作用する力や壁面上の数百点程度の風圧の値が測定されますが、建物周りの流れの詳細を把握するには、さらに膨大な観測点での風速情報が必要となり、測定範囲が限られました。
近年、電算機性能の飛躍的な向上に伴い、コンピューターにより風の流れを解析する流体計算が建築分野でも用いられており、平均風速の等高線図から風の流れの把握が行われています。しかし、風荷重などの耐風安全性の評価においては、時々刻々と変化する不規則な風の流れを把握する必要があり、自然風の乱れや建物の周りの風の流れを長時間にわたって追従する高精度な解析技術の開発が課題とされてきました。
このたび開発した「数値風洞 エアロダイナ」は、自然風の乱れを考慮し、構造物周りの不規則な風の流れを高精度に予測するソフトウエアです。膨大な数のポイントにおける風速・風圧を同時に算出することで、風揺れや大きな風圧をもたらす風の流れを、コンピューターグラフィックで把握することが可能です。
「数値風洞 エアロダイナ」の主な特長は以下の通りです。
自然風を模擬した数種類の風の流れ方を入力し、風向ごとに風洞実験と同様の条件で解析できます。
膨大なポイントの流れの情報から風の流れや建物近傍の渦の動きをグラフィック化し、風揺れや、大きな風圧力をもたらす要因を把握しながら耐風安全性を評価します。また、ケーススタディーのために断面形状を部分的にモデル化したシミュレーションも可能です。
合理的なメッシュ計算を用いて高解像度を実現しており、一般の流体計算では再現が困難とされてきた屋根面に作用する強い負圧や曲面構造物に作用するピーク負圧などが再現できます。
耐風安全性の向上のために、構造物の振動と風の流れを連成させた空力不安定振動の解析もできます。
これらにより、設計初期段階から最終段階において、それぞれの段階に応じた建物モデルで解析し、現象を踏まえた信頼性の高い評価が行えるようになりました。現在、実物件3件に適用し、従来の風洞実験では困難であった風の流れの特性をグラフィック化し、居住性能の説明などに利用しています。
大林組は、これまで風洞実験を中心に、構造物の構造骨組み設計用風荷重、外装材設計用風荷重、居住性能評価を行い、構造物の耐風安全性の確保に努めてきましたが、さらに、今回開発した「数値風洞 エアロダイナ」を新たに加え、お客様の多様なニーズに応えた建物の追求と、安全・安心な社会の実現に貢献してまいります。
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