7月19日、東京・新橋の第一ホテル東京で、第36回エンジニアリング功労者賞などの表彰式が行われました。大林組が開発した制振システム「ブレーキダンパー」と、LPガス(液化石油ガス)を貯蔵する地下岩盤貯槽「倉敷・波方国家石油ガス備蓄基地」建設プロジェクトが功労者賞を受賞しました。奨励特別賞には、除染土壌の放射能濃度を迅速に測定する「TRUCKSCAN(トラックスキャン)」が選ばれました。
エンジニアリング協会は、社会経済の発展、環境と調和した社会システムの構築をめざして、1978年に発足しました。産学官の協力のもとで、技術・知識を有する企業が技術開発を推進できるよう幅広い事業を行っています。毎年、エンジニアリング産業の発展や先駆的技術の開発などに貢献したグループや個人を表彰しており、今回、14件を功労者賞に、今後の商業化が期待される技術など7件を奨励特別賞に選定しました。
【第36回エンジニアリング功労者賞】
■中小規模プロジェクト枠
高性能摩擦ダンパー「ブレーキダンパー」開発チーム(大林組)
ブレーキダンパーは、強風や地震で建物が揺れたとき、走行中の車がブレーキをかけるようにステンレス板とブレーキ材(摩擦材)の間で摩擦力を発生させ、揺れのエネルギーを吸収する制振システムです。
超高層から低層、既存建物の耐震補強など幅広い建物に適用しているほか、鉄道や高速道路の橋梁にも採用しており、すでに60件を超える実績があります。
制振ダンパーの分野で建設業界の先駆的役割を果たしている点が評価されました。
■エンジニアリング振興
倉敷・波方国家石油ガス備蓄基地建設プロジェクトチーム(石油天然ガス・金属鉱物資源機構をはじめ大林組ほか15社)
150万tのLPガスを貯蔵する国家備蓄体制整備の一環として、地下150m以深の岩盤を掘削し、巨大な備蓄基地を建設しました。
常温、高圧のLPガスを、周囲の地下水圧によって封じ込める水封式岩盤貯槽の建設は日本初となります。工事中のさまざまな挙動を計測・解析、再評価して次段階の施工にフィードバックする情報化施工により、水封機能と岩盤の空洞安定性を確保しました。
ゼネコン、設備会社など、各社の技術を結集させ、世界最大規模のプロジェクトを完成させたことが高く評価されました。
【第8回エンジニアリング奨励特別賞】
■実プロ化が期待される先駆的技術
放射能濃度測定装置TRUCKSCAN研究開発チーム(大林組、Canberra Industries、キャンベラジャパン)
福島第一原発事故により発生した放射性物質を含む廃棄物は、中間貯蔵施設への早期保管が求められています。各地に仮置きされた除染土壌を適切に保管するため、放射能濃度を正確に測定できる技術を開発しました。
TRUCKSCANは、車に積んだ除染廃棄物の放射能濃度を約30秒で測定できるシステムです。大型測定対象物の放射能濃度を測定する技術に、フレコン(袋状包材)の位置検出技術などを加え、複数のフレコンそれぞれの放射能濃度を高精度に算出します。
従来の簡易測定法と比較しても測定時間を約12分の1に、費用を約15分の1に削減でき、装置移設作業を4時間以内でできるなど、実用化が期待される技術として評価されました。
大林組はこれからも技術と知恵を結集するエンジニアリングを通じて、さらなる安全を提供し、安心して暮らせる街づくりに貢献できるよう努めてまいります。