武蔵野の自然を残す技術研究所でキンランの観察会を実施

サステナビリティ

技術研究所の雑木林に咲くキンラン

黄金色の花を付ける絶滅危惧種キンラン。雑木林ではアリなどの昆虫が受粉の手伝いをします

5月9日、大林組技術研究所(東京都清瀬市)で、「清瀬の自然を守る会」の会員など43人を招いて、技術研究所内の雑木林に自生する貴重種キンランの観察会を行いました。8回目の開催となる今回は、昨年までの観察ルートを変更し、新たなキンラン発生場所などを約1時間かけて観察しました。

参加者からは「サイハイランを初めて見ることができた」との声が多数上がりました

参加者からは「サイハイランを初めて見ることができた」との声が多数上がりました

開設当時の技術研究所。写真右上は現在も残る雑木林。清瀬市周辺の武蔵野台地は薪(たきぎ)や炭の原料となる木材を採取するアカマツやコナラの林で構成されていました

開設当時の技術研究所。写真右上は現在も残る雑木林。清瀬市周辺の武蔵野台地は薪(たきぎ)や炭の原料となる木材を採取するアカマツやコナラの林で構成されていました

今年のキンランの開花ピークは例年より早い4月末で、年々変わりゆく雑木林の様子を大林組の技術者が解説。数年前から発生したキンランの群生場所や貴重なサイハイランなどを観察しました。

1965(昭和40)年の技術研究所開設当時から保全する約1.8ヘクタールの雑木林には、武蔵野の自然がそのまま残っており、絶滅危惧種に指定されているキンラン、ギンラン、ササバギンランなどが多数生育しています。

大林組では1998(平成10)年から雑木林に咲くキンランの個体数や生育状況などのモニタリングを実施しています。枝折れした高木の処理や下刈り、つる草除去、落ち葉かきなどの順応的管理(※2)を行うことで、キンランの個体数を徐々に増やしてきました。

雑木林を歩いた後は屋内で、当日観察した植物の特徴や、明治神宮の森に代表される、都市の森がどのようにつくられてきたかなどをスライドで紹介しました。参加者は熱心に耳を傾けていました。

大林組はこれからも、自然環境や生態系の保全を通して、都市の中の緑地づくりや生物多様性の保全などに役立つ技術開発に努め、人と自然が共生する持続可能な社会づくりに貢献してまいります。

技術研究所の雑木林では、キンランの個体数は232個(1998年)から521個(2015年)に増加

技術研究所の雑木林では、キンランの個体数は232個(1998年)から521個(2015年)に増加

白い花を咲かせるササバギンラン(左)やラン科の貴重種サイハイラン(右)も観察されました

白い花を咲かせるササバギンラン(左)やラン科の貴重種サイハイラン(右)も観察されました

※1 キンラン
ラン科キンラン属の多年草で、地生ランの一種。名前は黄金色の花をつけることに由来します。1997年、環境庁のレッドリスト(日本の絶滅の恐れのある野生生物の種のリスト)においてキンランは絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定されました。最新版の環境省レッドリスト2015においても絶滅危惧Ⅱ類に指定されています

※2 順応的管理
継続的なモニタリング評価と検証によって随時見直しと修正を行いながら管理すること