1月4日、大林組本社(東京都港区)において、2016年環境表彰を実施しました。大林組は、2010年2月に中長期環境ビジョン「Obayashi Green Vision 2050」を策定し、事業活動を通じて地球環境の課題解決に取り組み、持続可能な社会の実現をめざしています。
環境表彰は、大林組グループ全体を対象に、環境分野に関する社員の意識を高め、事業活動における環境への取り組みを強化するため、環境に関する顕著な功績があった活動、または他の模範となる活動を表彰するものです。
2016年は、推薦のあった多くの活動事例の中から、汚染土壌の浄化、汚泥排出の抑制、省力化工法などにおいて先進的な試みを行った5件が選ばれました。
クロロクリン工法の開発・普及プロジェクト
微生物の力で汚染土壌を浄化
大林組は、2004年、揮発性有機化合物(VOC)で汚染された土壌や地下水を、掘削せずに原位置で無害化するバイオ処理工法「クロロクリン工法」を開発しました。食品由来の微生物栄養剤を汚染土に注入することで、その土地の微生物を活性化させ、浄化させます。
クロロクリン工法は、掘削や鉄粉混合などの従来工法で使用する大型重機が不要なため、騒音・振動も抑制します。従来と比較してCO2排出量を約85%、エネルギー使用量を約90%削減できるなど環境にも優しく、また砂から粘性土まで幅広い質の土壌に対応できることから地層ごとに工法を分ける必要がないため、工期短縮、コスト削減にも貢献します。
開発以来、改善・改良を重ねた結果、VOCだけでなく重金属汚染にも適用可能となりました。現在23件の汚染現場で適用され、今後も工場跡地の再開発や稼働中の事業所における環境修復工事への適用が見込まれています。
再生可能エネルギーを活用した建設プロジェクト
BCP性能を備えた自立型のエネルギーシステムを構築
国際石油開発帝石 直江津東雲寮が建設された新潟県上越市は、同社の天然ガスパイプラインの結節点として重要な位置にあります。大規模災害時においてもLNG基地(液化天然ガス貯蔵タンク)をノンストップで稼働させるため、直江津東雲寮にBCP(事業継続計画)対応型の電力供給システムを構築しました。
太陽光発電、主に天然ガスを用いたコージェネ発電機、リチウムイオン電池などの電力源を統合的に制御するとともに、全館LED照明、高断熱、自然換気システムなどの環境負荷低減に配慮した設備を構築。一般的な施設と比較した場合、CO2排出量34%の削減、建物の一次エネルギー消費量24%の削減を実現します。また、多様な電源を組み合わせることで、電力の自立を可能にしました。
こうしたエネルギーシステムの構築は各方面で高く評価され「平成26年コージェネ大賞 民生用部門理事長賞」をはじめとする多数の賞を受賞し、社会的評価を得ています。
水閘門改築工事における環境負荷低減プロジェクト
建設汚泥の発生を抑え多様な生き物を育む干潟を保全
伊勢湾と日光川の水位差を調整する日光川水閘門を改築するに当たって、施工現場が藤前干潟(ラムサール条約登録湿地(※1))に隣接していることから、高い技術力もさることながら環境への配慮は最重要課題とされました。
基礎杭のコンクリート打設時には、海中へのコンクリートの漏出を防ぐため、既存工法を改良し、環境への負荷を抑えました。
また、躯体の一部を工場で製作し、現地での工程を省略する工法の採用や、建設副産物の抑制に努めるなど、3R(リデュース・リユース・リサイクル)活動への取り組みが、廃棄物の削減など環境効果となって表れました。
環境保全、環境負荷低減を実現した独創的かつ先進的なこれらの工法は高く評価され「平成27年度3R推進功労者等表彰 国土交通大臣賞」を受賞しました。
杭頭(くいとう)処理時の騒音・粉じん低減プロジェクト
鋼製防音カバーと集じん器の採用で工事環境を改善
市街地でのビル建設現場において、コンクリートを削る「はつり作業(※2)」の騒音対策は、多くの現場の課題となっています。
騒音規制法上の基準騒音レベル(特定建設作業で85db以内)を確保し、粉じん低減を実現するために「鋼製防音カバー」を製作。内部で杭頭処理作業を行いました。
その結果、防音カバー内での騒音値103dbが防音カバー外周辺では72dbとなり、敷地境界部でははつり作業を感じられないほど静かな環境が確保できました。また、カバー内に集じん器を設けることで作業環境の改善も図りました。
水平多工区構工法を活用した3R活動プロジェクト
中低層の集合住宅施工における作業の平準化工法を開発
東日本大震災以降、被災三県(宮城、福島、岩手)では復興工事の影響で、作業員不足やコンクリートの出荷制限(150m³/日)などの問題がありました。
そこで、少ない工区(サイクル工程)数で多くの作業量を消化する従来の工法を変更し、工区数を増やして、各工区の作業量を少なく(平準化)する水平多工区構工法を開発・適用しました。
具体的には、各職種の作業量を1日程度で完結できるように工区割りし、各作業員が毎日同じ作業を繰り返せるようにして、空き時間を減らしました。
また、2スパン分の柱梁のユニット化や戸境(こざかい)壁(※3)専用の大型型枠の開発により、環境負荷を大幅に低減し、生産性の向上も実現しました。
3R活動に積極的に取り組む姿勢が高く評価され「平成27年度3R推進功労者等表彰 推進協議会会長賞」を受賞しました。
大林組グループは、今後も環境分野に対する意識をさらに高め、事業活動における取り組みを一層強化してまいります。