大林組は、東京都目黒区にある祐天寺・地蔵堂の保存修復、免震工事を行っています。祐天寺では、歴史的価値を未来へ継承するため、江戸時代に建立されたさまざまな建物の保存や修繕が進められています。
2014年11月10日、免震層を設けるために境内の空いたスペースに横曳(ひ)きしていた地蔵堂を、元の位置に曳き戻しました。修繕方法などは、長年祐天寺の改修設計に携わるエースコーポレーションを中心に検討。大林組は設計段階から技術提案しながら工事を進めています。この日は日本の伝統建築を学ぶ東京大学の博士、修士課程の大学院生らが見学しました。
祐天寺は、1718(享保3)年に増上寺(東京都港区)の第36世住職であった祐天上人を仰いで、弟子の祐海上人が創建した浄土宗のお寺です。境内には、五代将軍徳川綱吉の養女竹姫から寄進された阿弥陀堂や仁王門など、多くの目黒区指定有形文化財が現存します。
2017(平成29)年に祐天上人300年御遠忌(ごおんき)の法要を迎えるため、その記念事業としての、仏舎利殿の改修、阿弥陀堂の保存改修、精進殿の建て替えなどが継続して行われています。地蔵堂の保存修復工事もその一環として行われるものです。
先に行った曳家工事では、まず地蔵堂を50cm持ち上げ、宙に浮いた柱を左右から鉄骨で挟んで固定し、その鉄骨をレールに載せ、地蔵堂を30m動かしました。
本来地蔵堂があった地面部分を掘削し免震装置などを施すとともに、建物の歴史的調査、修復方法の検討を行いました。
見学に参加した学生からは「ジャッキアップしたまま工事を進めるのではなく、あえて曳家工事を行ったのはなぜですか」などの質問が寄せられました。
地震の揺れを吸収する免震装置の上の免震床に固定された地蔵堂は、今後、屋根などの木造の修繕ステップへと進みます。
江戸から現代まで、各時代で補修工事が行われてきた地蔵堂。歴史的に最も価値ある伝統建築の再現となるよう、文献や資材、痕跡からひもとき、検討を重ねています。
地蔵堂の工事は2015年8月の完成をめざして進んでいます。
大林組は、これからも歴史的建物を丁寧に調査し、当時の技術の再現や最新鋭の技術の組み合わせで価値ある建物の保存を進めるとともに、建築を学ぶ次世代支援を進め、伝統建築の継承に努めてまいります。