大林組は、常温で硬化する高じん性高強度モルタル材料「スリムクリート」と、国家プロジェクトで開発された超高強度鋼材と大林組が開発した超高強度コンクリートを初適用した「超高強度CFT柱」を、大林組の技術研究所新本館の建設に導入しています。
スリムクリートは大型構造物や意匠性が求められる建築用部材などに利用でき、超高強度CFT柱は大スパンや吹き抜けのある開放的な空間を構築できます。
形状や大きさに制約のないスリムクリート
スリムクリートは、特殊粉体材料と超高強度鋼繊維を用いることで、従来の超高強度繊維補強コンクリート(UFC)と同等以上の強度特性(材齢2日で初期強度80N(ニュートン)/mm2以上、圧縮強度180N/mm2、引張強度11N/mm2以上)を実現します。
従来のUFCは、打設直後から水蒸気で熱を与えるなどの特別な養生が必要なため、設備の整った工場でしか製造できず、製造規模や運搬の面で制約がありました。スリムクリートは常温で養生が可能で、現場でも打設できるため、施工規模や施工条件の制約を大幅に軽減できます。
技術研究所新本館の屋内ブリッジ(長さ約14メートル、幅1.7メートル、桁高335ミリ)への適用にあたっては、実物大の部材を使った曲げ実験で安全性を確認するとともに、荷重を与えながら加熱する耐火実験で耐火性能を確認し、国土交通大臣認定を取得しています。
また、引張強度が高く、内部の鉄筋を省略できるので、35ミリの薄肉断面成形も実現します。流動性や充てん性に優れているため、複雑な形状に対応できることも特長です。従来のUFCの適用範囲に加え、大規模構造物や土木・建築構造物のリニューアル、意匠性の高い部材などに利用できます。
国内最高強度の超高強度CFT柱
CFT柱は、鋼管柱の内部にコンクリートを充てんした構造形式で、耐震性や耐火性に優れた柱部材です。
今回実用化した超高強度CFT柱は、従来の2倍の強度を持つ超高強度鋼材「H-SA700」(引張強度780N/mm2)と超高強度コンクリート(設計基準強度160N/mm2)を使用することで、阪神・淡路大震災クラスの地震でも安全性を確保します。
これにより、柱の本数が少ない大スパンの空間を、従来に比べて細い柱でも実現できるようになり、意匠性と快適性に優れた環境を実現できるようになりました。
また、鋼管表面には耐火塗料を塗布することで仕上げ寸法を縮減し、細い柱のままで耐火性を高める技術も確立しています。
大林組は、超高強度材料の開発による構造物の長寿命化とスリム化で、建築材料となる資源の使用量を削減します。環境にやさしく、安全で快適な空間づくりによって社会に貢献していきます。