JAXAとの共同研究で月や火星にも適用可能な地産地消型の基地建設材料の製造方法を開発
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プレスリリース
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)(本社:東京都調布市、理事長:山川宏)と共同で、地球や月、火星で容易に入手可能な原料を利用して有用な建設材料を生産する技術として、マイクロ波による加熱焼成やコールドプレスといった方法によりそれぞれの環境と構造物の用途に適したブロック型の建設材料を製造する方法を開発しました。
近年、米国や欧州を中心に宇宙開発に関する動きが活発になり、世界的に月や火星への無人、有人探査の機運が高まっています。日本では、JAXAが大学や民間企業の技術を活用して宇宙探査の研究を加速し、宇宙・地上双方へ成果を応用することを目的に、2015年に「宇宙探査イノベーションハブ(※1)」を設置しました。この研究分野の一つである「地産・地消型探査技術」は、現地の資源を利用することで地球からロケットで資材の運搬にかかる莫大なコストを低減し、月や火星での活動を持続可能にすることをめざしています。
大林組は1990年頃に、月や火星の探査に必要な基地建設の材料を、現地資源を利用して製造する方法を研究し、マイクロ波やコールドプレスによるブロック製造の可能性を確認していました。しかし、それぞれの環境や構造物の用途に適した製造方法を確立するには、加熱焼成温度を細やかに制御することや、真空に近い状態でコールドプレスすることによる材料強度への影響を明らかにする必要があったことから、今回、宇宙探査イノベーションハブの研究テーマとして提案し、JAXAとの共同研究に至りました。
その結果、月と火星それぞれの環境に合わせて、マイクロ波による加熱焼成やコールドプレスといった技術を適用し、基地建設に利用できるブロック型の材料を製造する方法を開発しました。また、JAXAから支給された月の模擬表土などを用いて試験体(ブロック)を製造し、電子顕微鏡での表面観察や圧縮試験による強度確認を行い、基地建設に適用可能であることを確認しました。
当技術は、月や火星での適用ばかりでなく、地上で適切な建設資材が得られない地域において、建設材料を地産地消型で製造することにも役立つため、地上での応用も検討しています。
今回開発した建設材料の製造方法は以下のとおりです。
月の環境を想定し、マイクロ波加熱により焼成物を製造
月では、水の調達が困難なため、マイクロ波加熱により建材を製造します。月の模擬表土にマイクロ波を照射すると、およそ1000℃以上で一定時間加熱することで固化体が得られます。1100℃程度で、土粒子表面が溶けて結合し、普通れんが相当の強度を持ち内部に空隙のある固化体(焼結物)になります。また、1100℃以上に加熱すると、土粒子が完全に溶けて、コンクリート相当の強度を持ち内部に空隙のない固化体(溶融物)になります。
月の重力は地球上の約6分の1であることから、居住施設などの構造材料、放射線遮蔽(しゃへい)材には普通れんが相当の強度を持つ焼結物を使用し、より強度が必要なロケット発着場の基盤や道路などにはコンクリート相当の強度を持つ溶融物を使用することを想定しています。マイクロ波加熱は、それぞれの構造物に必要とされる強度や性質に合わせて、加熱エネルギーが最小となるように使い分けることが可能です。
火星の環境を想定し、コールドプレスによる圧縮固化物を製造
コールドプレスは、砂などの原料に粘土鉱物と水を混ぜ、熱を加えずに圧力を加えて固形物を製造する方法です。火星には二次鉱物である粘土鉱物が存在し、水も氷の形で得られると推測されることから、今回の実験では水分を含む粘土鉱物を砂と混合し、常温で高い圧力をかけるコールドプレスでブロック型の建設材料を製造しました。
大気の密度が地球の約100分の1の火星表面では、ブロックの強度は地球上で製造するより1割程度増加することが分かっており、火星の環境に適した製造方法であるといえます。圧力を上げるとブロックの強度は増加し、最大で普通れんが相当の強度を得られます。
火星表面の重力は月の重力よりは大きいものの地球上の約3分の1であることから、居住施設などの構造材料や放射線遮蔽材などとして使用する場合には、普通れんが相当の強度で十分であると想定しています。
今後は、今回開発した地産地消型の建設材料の製造方法を応用し、ブロックの大型化や品質の安定を図り実用化に向けた改良を進めていきます。これからも大林組は、月や火星での基地建設や宇宙エレベーター建設など、建設会社の視点で未来の宇宙開発に資する技術の開発に取り組み、社会の持続的な発展に貢献していきます。
- ※1 宇宙探査イノベーションハブJAXAは、さまざまな異分野の人材・知識を集めた組織を構築し、これまでにない新しい体制や取り組みでJAXA全体に研究の展開や定着をめざすため、2015年4月に「宇宙探査イノベーションハブ」を設置。科学技術振興機構(JST)の支援を受け、月・火星のような重力天体での探査について、大学や民間企業の技術を宇宙技術と融合し、革新的な宇宙探査技術の開発および宇宙・地上双方への応用に向けて、「広域未踏峰探査技術」、「自動・自律型探査技術」、「地産・地消型探査技術」の3つの研究分野に取り組んでいる
以上
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