株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、国立大学法人岡山大学(所在地:岡山市北区、学長:槇野博史)との共同研究により、山岳トンネルの施工時に切羽(掘削面)の画像から崩落の予兆を瞬時に検知する「ロックフォールファインダー」を開発しました。
山岳トンネル工事では、(1)火薬や重機による岩盤の掘削、(2)切羽周辺の岩盤を支える鋼製支保工の建て込み、コンクリートの吹き付け、(3)岩盤へのロックボルト(※1)の打ち込み、という一連の作業を繰り返してトンネルを掘り進めていきますが、常に切羽に接近して作業を行うため、岩石の落下(肌落ち)に注意する必要があります。切羽付近では崩落の予兆を察知するために監視員が常に切羽の状況を監視していますが、小さなひび割れやわずかな剥落などすべての予兆を目視で捉えることは困難でした。
今回大林組が開発したロックフォールファインダーは、画像認識技術により切羽崩落の予兆を瞬時に検知すると同時に、警告灯やブザーで作業中の建設技能者に退避を促すシステムです。小さなひび割れや微小な落石など、崩落の予兆となる現象を目視よりも格段に高い精度で捉えられることから、安全性を飛躍的に向上させることができます。
ロックフォールファインダーの特長は以下のとおりです。
- 画像認識技術により山岳トンネル工事の安全性が飛躍的に向上
従来は切羽の状況を目視で監視していましたが、本システムではビデオカメラで切羽を撮影し、背景差分法と呼ばれる画像認識技術で現在と約0.1秒前の画像を繰り返し比較することにより切羽の変化を捉えます。
小さなひび割れのほか、直径わずか10mm程度の微小な落石に対しても石が動き始めてから0.5秒以内に検知できることから、作業中の建設技能者に対してより早く退避を促すことができます。
重機や人の動き、カメラの振動によっても画像は変化しますが、本システムではこれらによる変化を対象外とし、切羽における変化だけを正確に捉えます。
従来の目視と本システムを併用して切羽を監視することにより、安全性を飛躍的に向上させることができます。
- 市販のビデオカメラとノートパソコンなどで容易に導入
本システムは市販のビデオカメラとノートパソコン、警告灯などで構成され、特殊な機器を用いないことから導入が容易です。タブレット端末による遠隔操作・監視も可能であるため、トンネルジャンボ(※2)の上部にビデオカメラやノートパソコンを設置することにより、工事現場のどこにいても切羽の状況を確認することができます。
大林組は、ロックフォールファインダーを山岳トンネル工事に適用することで、より安全な作業環境を実現していきます。現在、大林組は、本システムに加え、切羽の画像から安全性を評価するAIの開発を進めています。今後は2つの技術を統合して切羽の評価精度を高めることにより、山岳トンネル工事のさらなる安全性、生産性の向上をめざします。