株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、大林組技術研究所(東京都清瀬市)本館テクノステーションについて、日本で初めてとなる「WELL Building Standard®(※1)」(以下 WELL認証)の認証を「ゴールド」ランクにて取得しました。WELL認証のプロジェクトタイプのうち、建物全体を評価する区分では世界初の認証となりました。
ESG(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governance)に配慮した経営が企業の長期的な成長に重要だという考え方が世界的に広まる中、心身の健康や豊かな生活などを積極的に実現・発展させる活動であるウェルネスは、健康経営の観点から持続可能な社会の実現に向けた企業の取り組みの一つとして注目を集めています。建物利用者の健康と建物空間のデザイン、構築、運用の関係性などウェルネスに配慮した建物・室内環境評価基準であるWELL認証は、IWBI(※2)によって2014年10月に最初の基準となるv1.0が正式公開され、認証制度がスタートしています。
認証取得に向けた登録件数は全世界で累計640件を超え、うち国外では50件が既に認証を取得しています(2017年11月現在)。空気の質と労働生産性との関係や、室内の光環境と集中力、健康阻害リスクとの関係など、医学的エビデンスに基づく評価項目・基準を有するWELL認証に適合する施設とすることが、従業員の健康の維持向上のみならず生産性向上をもたらすとして注目されています。
またWELL認証は、建物の環境性能の評価制度であるLEED(※3)と連携することでESGへの取り組み促進につながることが期待されており、LEEDと同様に普及拡大が見込まれています。
大林組では、建物利用者の健康活動や環境行動に働きかけ、安全・安心、健康、快適を実現する建築計画、運用・管理手法を「ウェルネス建築」と呼び、その実現に向け必要な技術開発に取り組むとともに、技術の向上に努めてきました。その結果、自社施設である技術研究所本館テクノステーションにおいて書類審査および現地審査を経て2017年11月21日付けで「ゴールド」ランクのWELL認証が付与されました。
これまで全世界におけるWELL認証はテナント部分など建物の一部分を認証の対象とする評価区分で取得されたものでしたが、建物全体を認証するNew and Existing Building(新築および既存の建物)の評価区分で認証を取得するのは世界で初めてとなります。
本館テクノステーションは 2010年の完成以来、最新鋭の研究環境を提供するオフィスビルとして、省エネルギーと知的生産性の向上とを両立すべく運用してきました。今回、改修工事などを必要とせずにWELL認証を取得したことは、本館テクノステーションがCASBEEやLEEDの認証で高く評価された省エネルギー性能のみならず、ウェルネスの観点でも先進的であることを示しています。
WELL認証取得をめざすに際し、室内環境や照明環境をウェルネスの観点で再評価するとともに、オフィス内の動線や周辺の自然環境、人々の働き方やカフェテリアのメニューに至るまでを評価対象として、基準適合に向けた対応策の検討を進めてきました。
その一環として導入したスタンディングデスクについては、座り過ぎが健康リスクを高めるとの調査報告が注目を集めていることから、お茶の水女子大学・長澤夏子准教授との共同研究により、執務者の心身面への影響を継続的に測定するとともに効果的な運用方法などの検証も進めています。
大林組はこれらの取り組みを通じ、日本国内でWELL認証取得の鍵となる、効率的な設備投資や維持管理手法、異なる法制度や文化的背景に基づく評価基準の導入ノウハウなどを蓄積するとともに、WELL認証に関する有資格者であるWELL AP(※4)を既に6人(グループ会社も含め8人)誕生させています。今後、高いホスピタリティが求められるお客様の施設の集客力向上、あるいは、健康経営を重視するお客様には優秀な人材の確保や、働く人々の活性化につながる「ウェルネス建築」を積極的に提案していきます。