大型風車をリフトアップにより組み立てる装置「ウインドリフト™」を開発

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、株式会社巴技研(本社:東京都中央区、社長:兼澤敏之)と共同で、大型風車の建設工事において、超大型クレーンを使わずに、リフトアップにより組み立てを行う装置「ウインドリフト」を開発しました。

 

ウインドリフト概要図

 

近年注目されている再生可能エネルギーを利用した発電事業の一つとして、風力発電事業があります。風力発電については、発電効率を高めるために大型発電機の採用が進んできており、それに伴ってハブ(風車の中心部)やブレード(風車の羽)などで構成されるローターの径が大きくなり、支柱も高くなるなど風車自体が大型化しています。

 

大型化には上空の強い風を捉えられるという利点がありますが、資材運搬や施工条件の制約などもあり、現在陸上用では発電容量3MWクラス(支柱の高さ90m程度)の風車が最大となっています。

 

風車の建設には複数の施工方法がありますが、ハブとブレードを地面で水平に組み立て、建て起こしながら支柱上端部へ上げていく地組工法や、ハブとブレードをそれぞれ直接支柱上端で取り付けるシングルブレード工法が一般的です。

 

いずれの工法でも3MWクラスの風車建設には、部材の組み立て、取り付けに1,200t級の超大型クレーンが必要となりますが、この超大型クレーンは国内には数台しかないため調達が困難であるうえ、現場への輸送も容易ではありません。また、いずれの工法も大きな施工ヤードが必要になることなどが課題でした。

 

今回開発したウインドリフトは、3MWクラスの風車を建設する場合でも超大型クレーンを使用せず、装置により部材をリフトアップすることで風車を組み立てる装置です。これまでにも同様の装置はありましたが、3MWクラスの大型風車への対応を可能とし、ハブとブレードの建て起こし機能を加えるなど、高機能化を実現しました。加えて本装置の使用により、超大型クレーンを設置する場所などが不要となり、最小限の施工ヤードで工事を行うことができます。

 

本装置の使用により、施工ヤードを確保するための準備工事が削減できるなど、従来工法よりも10~20%程度のコスト削減が可能です。また、強風などによる施工時のリスクも低減できます。さらに本装置は10tトラック程度の車両で搬入できることから、施工上の制約が緩和されます。

 

現在、建設を進めている大林組グループ最初の風力発電事業、三種浜田風力発電所(秋田県三種町)の風車建設において本装置を使用した結果、約10%のコスト削減を実現しています。

 

三種浜田風力発電所(秋田県三種町)

三種浜田風力発電所(秋田県三種町)

 

ウインドリフトの主な特長は以下のとおりです。

  1. 最小限の施工ヤードでの工事を実現し、建設コストを低減

    ウインドリフトは、ジャッキアップ式装置で部材をリフトアップしていくため、3MWクラスの風車建設時でも組み立てに超大型クレーンを設置する必要がありません。また本装置には、ハブとブレードを、立木などの障害物をかわすことができる上空で先に水平に組み立て、建て起こしながら支柱上端部へリフトアップする機能があるため、地上での組み立てスペースが不要となります。

    施工スペースを最大30%程度削減できることから、立木の伐採や造成などの準備工事を減らすことができ、また、超大型クレーンにかかるコストも不要となるため、10~20%程度のコスト低減が可能です。

    風車建設の施工ヤード比較

    風車建設の施工ヤード比較

  2. 幅広い施工条件に対応

    本装置は10tトラックなどの運搬車両で搬入できることから、山間部、離島、狭あいな現場などのさまざまな場所に搬入できます。また、搬出入が容易なことから、風車が運転を開始した後の突発的な機材の交換修理など、メンテナンス工事にも迅速に対応することが可能です。

  3. 風の影響を受けにくく、工程遅延のリスクを軽減

    従来工法のうち、ハブとブレードをそれぞれ直接風車の支柱上端に取り付けるシングルブレード工法は、3MWクラスの風車建設の場合、超大型クレーンを使用して高所(地上90m程度)へ部材を吊り上げたうえで、取り付ける作業が必要です。このような高所での作業は、風の影響により工程が大きく左右されることが課題でした。

    本装置では、ハブとブレードを立木上空(地上10m程度)で前もって水平に組み立て、油圧ジャッキにより安定してリフトアップすることから、風の影響を受けにくく、工程遅延のリスクを軽減できます。

大林組グループは、大型風車の建設に本装置を適用することで、より効率的かつ安全に工事を進めていきます。今後、1,200t級の超大型クレーンでは施工できないような大型風車やより高所での風車建設にも対応し、効率的な再生可能エネルギー発電への取り組みを通じて、環境に優しい社会の実現に貢献してまいります。

ウインドリフトを使用した風車建設(イメージ動画)

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014

巴技研 技術製品事業部
TEL 03-3533-6701

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。