株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、山岳トンネルの切羽前方地質の予測結果を取り込んだ新たなCIM(※1)システムを開発しました。
近年、ICT の全面的な活用によって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場をめざす取り組みである「i-Construction」が国土交通省主導で進められています。大林組は、2015年3月に竣工した近畿自動車道紀伊線見草トンネル工事(和歌山県西牟婁郡、発注:国土交通省近畿地方整備局)で、CIMの3Dモデルに、施工中に取得した地質状況などを統合化したデータを国内で初めて電子納品するなど、かねてから山岳トンネル分野におけるCIMシステムの開発に取り組んできました。
山岳トンネルでは、設計段階での事前調査技術の限界や地質の複雑性から、切羽前方の地質状況の十分な予測ができず、断層破砕帯や突発湧水に遭遇することが少なくありません。そのため大林組は、切羽前方の地質状況を高精度に予測できるノンコア削孔切羽前方探査「トンネルナビ®」(※2)を2008年に開発し、既に22現場、探査延長約30kmの実績があります。
このたび、トンネルナビ情報とボーリング孔内観察に基づくキーブロック(※3)の予測情報をCIMシステムに取り込むことで、切羽前方地質のさらなる見える化による施工の効率化、安全性の向上をめざす、予測型山岳トンネルCIMを開発・実用化しました。
予測型山岳トンネルCIMの特長は以下のとおりです。
- ノンコア削孔切羽前方探査「トンネルナビ」解析結果の3D化
通常、トンネルナビでは、1秒ごとに得られる削孔機械データの解析値を折れ線グラフで図化し、地山の硬軟や断層破砕帯の有無を予測します。この折れ線グラフを3D-CAD化しCIMに取り込むことで、当初想定した地山と実際の地山の違いを掘削前に明確化し、必要に応じてより最適な支保工配置への修正などを提案できます。
- ボーリング孔内観察画像で得られた岩盤中の割れ目からキーブロックを予測
ボーリング孔内観察装置(※4)によって得た画像から、地山に存在する割れ目の方向と角度を調べることで、割れ目とトンネル断面で構成されるキーブロックを見つけ、CIMシステム上でキーブロックの見える化を行います。キーブロックを事前に予測し、より具体的に見える化することで、掘削前に適切な対策方法を検討できます。
- 設計、施工、維持管理データの統合化
従来のCIMシステム同様、施工中に取得したデータを集約・統合化することで、施工完了後は、該当箇所の地質状況や施工状況を短時間の内に検索・表示することができるので、維持管理を効率良く行う支援ツールとなります。
本システムは、すでに九州地整椿山トンネル工事(宮崎県宮崎市、発注者:国土交通省九州地方整備局)ほか、複数のトンネル工事に適用され、信頼性が確認されています。大林組は、今後も、山岳トンネル工事において、設計から施工後まで効率的に行えるマネージメントツールとして、CIMを積極的に提案・展開していきます。