株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、摩擦力で建物の揺れを吸収する制振装置ブレーキダンパーと、鋼棒などを用いた引張ブレースを組み合わせることで、狭あいなスペースにも適用できるスリムな「ブレーキダンパー(引張ブレース型)」を新たに開発しました。
ブレーキダンパーは、自動車のブレーキを応用して、ステンレス板とそれを挟み込むブレーキ材を使用し、摩擦力によりエネルギーを吸収することで、地震時の建物の揺れを抑える大林組独自の制振システムです。超高層建物向けの数千kN(数百t)の大きな摩擦力を発揮するダンパーとして、60棟以上の実績があります。
一方、近年は工場などの中低層建物の制振補強工事が増加しており、数百kN程度(数十t)の小さな摩擦力のブレーキダンパーに対するニーズも高まっています。しかし、従来のブレーキダンパーは、大断面のH形鋼を使用しており、既存骨組みの柱や梁が細く、ダンパーの設置スペース(幅)に制限のある中低層建物の制振補強などへの適用は困難でした。
今回開発した「ブレーキダンパー(引張ブレース型)」は、鋼棒などを用いた4本の引張ブレースの中央に四隅がピンの中枠(四方枠)を設け、その中にブレーキダンパーを組み込んだスリムな制振ダンパーです。主要部材を断面積の小さな引張部材で構成したことで、柱や梁の細いきゃしゃな既存骨組みや、既存の配管などが入り組む狭あいなスペースにも適用できます。
「ブレーキダンパー(引張ブレース型)」の主な特長は以下のとおりです。
- 設置スペースに制限があっても適用可能
従来のブレーキダンパーは、引張と圧縮両方の力の作用に耐える構造となっており、圧縮力で座屈しない性能を確保するため、大断面のH型鋼を使用しておりました。しかし、ブレーキダンパー(引張ブレース型)は、構造上地震時に圧縮力がかからないため、H型鋼を使用する必要がなく、設置スペースに制限のある狭あいなスペースにも適用できます。幅200mm程度の設置スペースおよび最低限鋼棒を通すことのできる隙間(60mm程度)があれば適用可能です。
※クリックで拡大 - 大地震時に安定した制振性能を発揮しメンテナンスや地震後の取り替えが不要
狭あいな箇所に用いられることの多い、アングル材などを使用した一般的な耐震ブレースは、大地震時にブレースが変形に耐え切れず、座屈や破断といった破壊が生じて耐震性能が大きく低下することが課題でした。
「ブレーキダンパー(引張ブレース型)」は、大地震時に大きな変形を繰り返し受けても、ダンパーがエネルギーを吸収するため破壊が生じにくく、安定した制振性能を発揮します。メンテナンスの必要がなく、大地震によって作動を繰り返しても損傷しないため、取り替える必要がありません。
本技術は、すでに既存工場の制振補強(4件)や、このたび再整備が完了した大林組東京機械工場に適用されています。今後もさらなる改良を行い、設置スペースに制約がある中低層建物向けの制振部材として展開する予定です。大林組は、ブレーキダンパーをはじめとする制振技術の開発・改良に引き続き積極的に取り組み、安全・安心な社会づくりに貢献していきます。
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014
プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。