株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、粘性が高く団粒化しやすい土を短時間で砂状に改質する、速効性土質改良材「サラサクリーン」を開発しました。
現在福島県では、東日本大震災の影響で発生した福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性物質の除染作業が進んでいます。除染作業で回収した除去土壌(※1)は、最終処分するまでの間、中間貯蔵施設(※2)内の土壌貯蔵施設に埋め立て保管されることとなっており、減容化などを目的に、ふるいなどの方法で除去土壌に含まれている可燃物(草木や根など)と土壌に分別することが求められています。農地や森林などから回収した除去土壌は、粘性が高く団粒化しやすい性質で柔らかい泥の状態であることから、ふるいを行う前に含有する水分を減少させて砂状に改質しますが、生石灰などを添加してかき混ぜる従来の方法では、生石灰と水分の反応に時間がかかり、除去土壌を仮置きするスペースも必要となります。
今回大林組が開発した「サラサクリーン」は、短時間かつ少ない添加量で粘性の高い土をさらさらの砂状に改質します。除去土壌に対しても効果があり、可燃物と土壌の分別作業を迅速に進めることが可能です。
今回開発した「サラサクリーン」の特長は以下のとおりです。
- 粘性の高い除去土壌を短時間でさらさらの砂状に改質
土質改良材(生石灰)を添加してかき混ぜる従来の方法は、土壌が砂状になるまでに約12時間もかかるうえ、土壌を仮置きするためのスペースも必要でしたが、「サラサクリーン」は水分への反応が非常に早いため、土壌を仮置きするスペースを必要とせず、添加しかき混ぜるだけで改質が完了するので、大量の除去土壌を短時間で分別することが可能になります。
- 土質改良材の添加量減少に伴い改質後の除去土壌の容積が減少
土質改良材に生石灰を使う場合には80kg/tの添加が必要ですが、「サラサクリーン」を使うと、半分以下となる30kg/tの添加で生石灰と同レベルの改質が可能です。添加量が減ることに伴い、改質後の除去土壌の容積が生石灰を使った場合よりも5%減少し、より多くの除去土壌を埋め立て保管することが可能になります。生石灰に比べ薬剤費用は高くなりますが、作業などを含む改質費用の総額は生石灰を使用した場合と同等です。
- 環境負荷が小さい中性系
生石灰を使うと、降雨などによって土壌からアルカリ性の浸出水が発生し中和処理が必要となりますが、「サラサクリーン」は中性系のため、その心配がありません。また、生石灰と同じく改良材として用いられている廃石こうを使うと、埋め立て保管後に硫化水素ガスなどが発生する場合がありますが、「サラサクリーン」はその心配もありません。さらに、成分として含まれる鉱物の作用により、除去土壌に含まれる溶解性の放射性セシウムや鉛などの重金属類を吸着するため、これらの溶出による環境汚染を防止できます。
- コーン指数(※3)400~800kN/m²に地盤強度が改善され、その強度を持続
泥状の除去土壌を砂状に改質することで、工事用重機などが走行できる土壌の固さを確保することができますが、生石灰を使った土質改良の場合、改良材の添加後、時間経過とともにコーン指数が増大してしまうという欠点があります。このため、中間貯蔵後、最終処分に向け再度、減容化処理などを行う際には、大型の装置を用いて固くなった大量の土壌を砕く必要がありますが、「サラサクリーン」を使った場合は、土壌が適度な固さの状態を保つため、そのままで土壌掘削など減容化に必要な処理を行えます。
大林組は、中間貯蔵施設における除去土壌の改質に「サラサクリーン」を積極的に提案するなど、さまざまな技術や工法で除染事業に貢献していきます。
【土地改良の実施状況】
【性能確認試験表】土地改良材を添加しかき混ぜて1時間後の試験結果
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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