株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、長周期を含む大地震のさまざまな地震動による建物の揺れを大幅に低減させるため、「(仮称)新南海会館ビル」(発注:南海電気鉄道株式会社、本社:大阪市浪速区、取締役社長:遠北光彦)に大型のTMD(チューンドマスダンパー)制振装置を設置します。
東日本大震災では、長周期地震動の影響で、震源地から遠く離れた大阪市内においても超高層ビルが大きく揺れる現象が発生しました。また、近い将来に発生すると予想されている南海トラフ地震では、東京・大阪・名古屋などの大都市圏で長周期地震動が発生する可能性が高く、超高層ビルや免震建物など、固有周期が長い(ゆっくりと揺れる)建物が大きく揺れ、被害が拡大する可能性が指摘されています。これらの予想を踏まえ、大林組はBCP(事業継続計画)の観点から、本建物の屋上に大地震(※1)時の揺れを大幅に低減するTMD制振装置を設置することとしました。
一般の超高層ビルでは、構造体の変形制限を階高の100分の1として設計しますが、本建物では変形制限を階高の約133分の1に抑え(揺れを約75%に低減)、ワンランク上の耐震性能を確保しています。一般的に、耐震性能の向上には建物内部に制振ダンパーを設置することが有効ですが、施設計画や使用性を考慮すると、設置できるスペースが制限されます。本建物では、屋上に設置した大型のTMD制振装置と制振ダンパーを組み合わせることにより、建物内部の制振ダンパーの数を大幅に減らすと同時に高い耐震性能を実現しました。
大型のTMD制振装置の特長は以下のとおりです。
- 大質量により地震の揺れを大幅に低減
TMD制振装置は、建物振動時に頂部の錘(おもり)が建物と逆方向に動いて建物の揺れを低減する制振技術です。従来から超高層ビルなどに設置されており、その多くは、風や小さな地震の揺れを吸収するためのものでしたが、本建物のTMD制振装置は、長周期を含む大地震のさまざまな地震動に対して効果を発揮します。
一般的に建物質量に対する錘の質量比を大きくすることで、建物の揺れを低減する効果が高まるとともに、ロバスト性(※2)も高まり、幅広い周期の揺れに対応できます。本建物では大質量(約2,600t、本建物質量の3%程度で1フロア分に相当)の錘を従来の振幅よりも大きい振幅で動かすことにより、大地震時の揺れを大幅に低減します。
- 汎用製品を活用したシンプルな構成で既存建物にも設置が可能
TMD制振装置の錘は、支持材・復元材・減衰材を用いて建物に設置されます。これまでは、大きな質量を支持しながら最大で約±2mの大振幅に対応できる支持材・復元材・減衰材の汎用製品はなく、実用化に課題がありました。今回採用するTMD制振装置は、中間フレームを介して2段構成で錘を支える構造により、各制振装置に生じる変形を半分にすることで、汎用製品である天然ゴム系積層ゴムとオイルダンパーの使用を可能にしました。
また、これまで地震対策として設置されてきたTMD制振装置は、支持材にすべり支承を用い、復元材を別に組み合わせる構造が多く見られますが、本建物では積層ゴムが支持材と復元材を兼用できるようにしたため、シンプルな構成となり、従来よりも低コストの装置となっています。
本TMD制振装置は、錘の分割などによりTMDの設置面積を変えることが可能であるため、配置スペースに制約のある既存の超高層建物にも設置できます。
大林組は、保有する地震対策技術を新築や改修工事に積極的に提案し、社会の安全・安心と快適な暮らしの実現に貢献していきます。
【物件概要】
名称 |
:(仮称)新南海会館ビル |
所在 |
:大阪市中央区難波5-1-60 |
発注者 |
:南海電気鉄道 |
設計者 |
:大林組 |
施工者 |
:大林組・竹中工務店・南海辰村建設共同企業体 |
階数 |
:地上31階(31階は機械室)、地下2階、高さ 約148m |
延床面積 |
:約8万4,000m² |
用途 |
:事務所、店舗、ホール、医療施設ほか |
構造 |
:鉄骨造(一部、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造) |
工期 |
:2015年9月~2018年9月(予定) |
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014
プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。
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