200N/mm2の「超」高強度コンクリートを実現

プレスリリース

大林組は、新しい混和材「ジルコニア起源シリカフューム(※1)」を用いた″超″高強度コンクリートを開発し、技術研究所(東京都清瀬市)において実施した実証実験で200N/mm2の強度を実現しました。この技術により、剛性が高く、耐震性・耐風性にも優れた高さ300mクラスの超高層ビルの建設を可能にします。

80N/mm2を超える高強度コンクリートでは、強度を高めるための混和材として、シリカフュームが必要不可欠とされています。従来のシリカフュームを使用したコンクリートでは、実際の建物に適用できる実用可能な強度として、150N/mm2が限界とされていました。
大林組では数年前より、工業用セラミックの一つであるジルコニアを精製する過程で副生されるシリカフュームに着目し、これを混和材に用いて超高強度コンクリートの開発を推進してきました。この「ジルコニア起源シリカフューム」は、従来のシリカフュームに比べて純度が高く、適度な粒径のため強度を高めることができます。この度、一般のコンクリートプラントで「ジルコニア起源シリカフューム」を用いたコンクリートを製造し、1m角の模擬柱部材を作製し、強度を確認しました。このような実適用可能な条件のもとで200N/mm2の強度を達成したのは業界で初めてとなります。

使用材料は、中庸熱セメントに「ジルコニア起源シリカフューム」を混合し、骨材には安山岩を使用しました。練混ぜやすくするための高性能減水剤や火災時の爆裂防止のための有機繊維も添加しています。

このコンクリートは、従来の高強度コンクリートに比べて、以下の点に優れています。

  1. 高流動で低コスト

    通常、高強度コンクリートの製造には、練混ぜしやすくするために、「高性能減水剤」を添加します。「ジルコニア起源シリカフューム」は、分散性に優れており、コンクリートとした場合の粘性を低下し、流動性を向上します。このため従来に比べ、高性能減水剤の使用量を約30~40%低減でき、コストダウンも図ることができます。


  2. 自己収縮が少なく高品質

    超高強度コンクリートは、強度が高くなるほど硬化する際の体積減少(自己収縮)が大きくなり、ひび割れの発生が懸念されます。今回開発したコンクリートは、従来の高強度コンクリートに比べて自己収縮が低減できるため、品質の向上につながります。


  3. 大スパン化が可能で設計の自由度を確保

    従来の性能を大きく上回る200N/mm2のコンクリートを用いることで、建物の強度は確保しながら、柱や梁をスリム化したり減らしたりすることができます。これにより、コストダウンが図れるとともに、設計の自由度が大幅に向上します。

大林組は、今回の実証実験を通じて、「ジルコニア起源シリカフューム」を用いた超高強度コンクリートの力学的性質や耐久性などについて詳細に検証いたしました。今後は、11月に技術研究所内に完成予定の「火災工学実験棟」において、実際の建物に適用することを想定して上部から荷重をかけて加熱実験を行い、耐火性能を確認していきます。

大林組は今後、200N/mm2の大臣認定の取得を目指すこととしています。また、超高強度コンクリートを早期に実工事へ適用できるよう、積極的に提案していきます。

※1 ジルコニア起源シリカフューム
耐火物や研磨・研削材、電子材料、窯業顔料などに使用されている電融ジルコニア(酸化ジルコニウムZrO2)を精製する際に副生されるもので、ジルコンサンド(ZrSiO4またはZrO2・SiO2)を2,200℃に電融した際に生じる排ガスを集塵したもの。主成分は従来のシリカフュームと同様にSiO2
今回用いたシリカフュームは、従来のものより粒が大きく(平均粒径1μm 。従来のものは0.1~0.3μm)、セメント粒子の間によく分散して流動性を向上し、強度も高める。


作成中の模擬部材

模擬部材

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