自然のエネルギーを最大限に利用した低温貯蔵施設を開発

冬季の冷気を利用して、ランニングコストを最大で従来の1/4に抑えます

プレスリリース

大林組は、冬季の冷気を利用して、土中に設けたアーチ型貯蔵庫の周囲の覆土や、貯蔵庫下の蓄熱水槽、庫内の製氷器の土や水を冷却し、夏季の冷熱源として利用する「パイプアーチ型雪氷利用貯蔵庫」を開発し、牧野工業(株)(本社:北海道虻田郡ニセコ町、社長:牧野雅之)と共同で実用化しました。
新エネルギー・産業技術総合開発機構が推進する環境調和型エネルギーコミュニティフィールドテスト事業において、牧野工業(株)がニセコ町で、川原種苗(本社:北海道虻田郡ニセコ町、社長:川原与文)と日鐵建材工業(株)(本社:東京都江東区 、社長:岡田明久)の協力を得て完成した同施設の検証を進めています。

北海道などの寒冷地では、雪室、氷室、人工凍土、アイスシェルター、雪中貯蔵など、冬季の冷気を利用した低温貯蔵施設がよく用いられています。しかし、従来の低温貯蔵施設は直接外気にさらされると貯蔵庫内の温度調整が難しくなることから、化学製品の断熱材をふんだんに利用する必要がありました。このため、自然エネルギー利用の持つ「環境にやさしい」コンセプトから逸脱する傾向にありました。
厳冬期、貯蔵された作物を凍結から保護する目的で、従来は温度緩衝水槽を別室に設けて対応していました。その結果として、貯蔵スペースが削られ、収容容量に対しての建設コストも割高なものとなっていました。貯蔵容量を十分に確保でき、温度調節が容易で、貯蔵物への影響が少なく、ランニングコストを抑えた低温貯蔵施設を低コストで建設する方法が求められていました。

今回、大林組が開発し、ニセコ町に完成した低温貯蔵施設は、貯蔵施設の周囲を覆う覆土や、貯蔵庫下の蓄熱水槽、庫内の製氷器を冬季の冷気を利用して冷却し、土や水を凍らせて冷熱源として利用する新しいシステムです。覆土は、断熱層と冷熱源の2つの機能を兼ねており、外気温の影響を低減することができるので、貯蔵庫内の温度調節が容易で、かつ貯蔵容量を十分に確保することができます。また、冬季に蓄えた冷熱を利用することで夏季のランニングコストを最大で電力冷蔵施設の1/4程度に抑えることが可能なシステムです。

実証を進めている低温貯蔵施設「パイプアーチ型雪氷利用貯蔵庫」の特長は次の通りです。
  1. ランニングコストを最大で、従来の1/4に抑えることが期待できます
    冬季に蓄えた冷熱と、覆土による断熱効果により、従来型の電力冷蔵施設と比較した場合、最大でランニングコストを1/4に抑えることが期待できます。現在進めている実証運転により、施設の信頼性を確認していきます。

  2. 環境へ配慮したシステムです
    自然にある土を利用することでポリウレタンなどの化学的な製品の使用を最小限にし、また、自然の冷気を利用することで電力消費を抑えた、環境に優しい貯蔵システムです。

  3. 貯蔵容量を大きく確保することができます
    覆土が冷熱源と断熱層を兼ねていること、温度緩衝水槽を地下に配置したことで、施設全体の規模を抑えながら、貯蔵容量を大きく確保することができます。

  4. 適切な保存温度を保持します
    貯蔵温度は通年で、0~5℃を保持します。貯蔵する農作物に合わせて、覆土冷熱、床下温度緩衝水槽、製氷器の蓄冷熱を制御することで、適切な保存温度を保持することが可能です。

今回開発したシステムは個人生産農家でも投資可能な施設です。大林組では、今後、今回開発したシステムを、農業組合だけでなく個人生産農家へも積極的に提案していきます。

パイプアーチ型雪氷利用貯蔵庫

以上

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大林組 東京本社 広報室企画課
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