PCLNGタンクの2次断熱層を、建設コスト半分で、急速施工

ポリウレタンフォームとライニング補強材を、遠隔監視により、同時に、自動施工

プレスリリース

大林組と大阪ガス(株)(本社:大阪市中央区 、社長:野村明雄)、東洋ゴム工業(本社:大阪市西区、社長:片岡善雄)は、共同で、プレストレストコンクリート(PC)LNGタンクの断熱層を、従来の半分のコストで、工期を2/3に短縮する急速施工法を開発、実用化しました。カメラでモニタリングしながら遠隔操作による自動施工を実現したことで、省力化と安全性も向上しています。

PCLNGタンクは、マイナス164度の液化天然ガス(LNG)を貯蔵する内槽、内槽を保冷するための保冷材、保冷材を保持し、防湿のために封入される窒素ガスを密閉する外槽、液漏れ時に液漏れを防止するPC製の防液堤(外壁)で構成されています。PCの防液堤には、万一の内槽からの液漏れ時に、初期の気化ガス発生量を抑制し、コンクリートが急激な温度変化にさらされないように、冷熱抵抗緩和部と呼ばれる硬質ポリウレタンフォーム(PUF)の断熱層が設けられます。
従来、PUF断熱層の設置は、次の手順により行われていました。
1.ゴンドラに乗った作業員が、スプレーガンを用い手動で3層重ね合わせる形で吹き付けます。
2.PUFの固化後に表面の凹凸を切削、整形します。
3.平滑になったPUF上に、補強のためのガラスメッシュを樹脂により張り付けるライニング補強工事を施します。

従来の手順では、内槽と外槽の間の非常に狭隘な空間で、38mの高さの壁面を、ゴンドラ上で作業するため、非常に手間と時間を要し危険を伴う高所作業でした。また、吹き付け時にはミストが浮遊し、切削、整形作業にも発生する切削屑の粉体のために、非常に劣悪な作業環境で、作業員は、常に防塵マスクを着用しなければなりませんでした。

今回、開発したPUF断熱層の急速施工は、ライニング補強工事とPUFの設置を同時に自動化施工することで、工事費を従来の半分に削減し、工期も2/3に短縮しました。作業を行うゴンドラは無人で、ライニング補強材(ガラスメッシュ)を繰り出す装置とPUFを注入・充填する装置で構成されており、カメラによるモニタリングで遠隔操作されます。従来の40m近い高所作業と、粉体のために劣悪な環境での作業が、不要となり、省力化と安全性の向上を実現しています。

開発した2次断熱層の急速施工法の手順は、次のとおりです。
  1. 最初に1列だけ縦スペーサを設置します。
     
  2. 設置した縦スペーサと外槽の内壁面、ゴンドラから繰り出されるガラスメッシュ、離形紙を4方の型枠として、PUFを注入・充填します。
     
  3. ゴンドラは、ガラスメッシュと離形紙を繰り出しながら、遠隔操作により注入・充填装置を外槽壁面に平行に走行させてPUFを注入・充填しながら、下から上方に向かって移動します。
     
  4. 縦に一列のPUF設置が完了した後は、これをスペーサ代わりにしてPUFの設置を繰り返します。

今回開発した2次断熱層の急速施工法の特長は、次のとおりです。
  1. 断熱層の設置工事費を従来の1/2に削減
    スペーサの取り付けは最初の一列だけで済み、従来必要であったPUFの切削や、PUF設置後のライニング補強材の張り付け作業も不要となります。また、ゴンドラでの作業は自動化されているので省人化も実現しています。結果として、従来に比べ建設費の1/2の削減を実現しました。

  2. 断熱層の設置工期を従来の2/3に短縮
    従来に比べ、大幅な省力化を実現した結果、工期も2/3に短縮することができました。

  3. 作業員数を30%削減
    ゴンドラは無人で、カメラをモニタリングしながら遠隔操作により作業を行うことができます。スペーサ取り付け作業やPUFの切削作業の省略などと合わせて、PUF設置工事にかかる作業員数を30%削減することができます。

  4. 安全性が向上
    作業員のゴンドラ上での作業は、最初のスペーサ設置とPUF設置後のガラスメッシュ取合い部の表面加工だけとなり、高所作業を著しく減らすことができます。そのため安全性が向上しています。

  5. 環境に優しい工法
    吹き付け作業に伴うミストの浮遊や、PUF切削・整形過程で削り屑が発生しなくなるので、作業員の防塵マスク等の着用が不要になります。また、従来、切削・整形を前提として吹き付けを行っていた過剰吹き付け分のウレタン樹脂材料が低減します。産業廃棄物の削減を実現しています。

今回開発した工法は、大阪ガス姫路製造所で建設を進めているNo.2-4LNGタンクの施工において今年末より適用する予定です。この工法は、各種の低温液化ガス貯蔵タンクだけでなく、保冷倉庫の壁断熱などでも利用が可能で、今後、積極的に提案を行っていきます。

PC・LNGタンク急速施工装置試験風景

以上

■この件に関するお問い合わせ先
大林組 東京本社 広報室企画課
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