性能設計に対応した杭支持建物の地震応答解析システムを開発

杭や地盤の特性も考慮した耐震性能の評価が行えます

プレスリリース

大林組は、建築基準法の改正に伴い、杭支持建物の性能設計に対応できる地震応答解析システムを開発しました。建物のみではなく、杭や地盤の特性も考慮した耐震性能を、短時間のうちにパソコン上で評価することができます。

近年の地震災害を見ると、建物自身の耐震性能ではなく、建物が建っている地盤に起因すると思われる災害が散見されます。特に、兵庫県南部地震では、建物の杭基礎部分に、液状化に起因すると思われる種々の被害パターンがみられました。このため、同地震以降の耐震設計では、建物だけでなく、杭と地盤の特性を考慮する必要が求められるようになってきました。
これに対し、2000年6月から施行された改正建築基準法では、これまでの仕様規定型に加え、性能規定型の設計手法が取り入れられるようになりました。これは、従来「地盤種別」という大まかな分類で地盤の影響を考慮していたのに対し、個々の建物の真の安全性を評価するために設けられたものです。高さが60mを超える建物など大臣認定の取得が必要な建物だけでなく、一般の建物に関しても、地盤の特性を考慮した耐震性能の評価が要求されるようになりました。しかし、杭や地盤の特性を考慮した杭支持建物の耐震性能を把握するためには、非常に複雑で多大な作業を要していたため、その性能評価のシステム化が望まれていました。

今回開発した地震応答解析システムは、「修正Penzienモデル(※1)」を用いて建物、杭、地盤(液状化を含む)各部の特性を考慮した杭支持建物の地震応答解析を行うことができます。地震応答解析に必要な入力項目は少なくし、特に地盤については通常のボーリング調査で得られるN値(地盤の固さ)を基本にし、詳細な材料試験がない場合でも液状化の検討ができます。設計時にできるだけ簡便に種々の条件を短時間で何通りも検討できるシステムとなっています。

※1 修正Penzienモデルとは、建物、杭、地盤を質点系モデルで表わしてその地震応答を解析する手法の一つです


「地震応答解析システム」の特長は次のとおりです。
  1. すべての作業がPC上で行えます
    システムはExcelのワークシート上に構築されていますので、ユーザーはExcelの操作だけでデータ入力から地震応答解析、解析結果表示まで一連の作業として進めることができ、短時間で杭支持建物の耐震性能を評価できます。

  2. データ入力の煩雑さから解放されました
    杭支持建物や地盤の地震応答解析を行うためには従来煩雑なデータ入力が必要でした。特に解析モデルの作成は手間がかかり、また入力ミスの原因にもなります。自動モデル作成機能とモデル図化機能を用意することによりデータ入力の省力化を図りました。

  3. だれでも地盤の液状化を考慮した地震応答解析ができます
    地盤の液状化の検討には特別な材料試験を行って入力データを設定する必要がありました。本システムでは通常のボーリング調査結果で得られるN値と土質分類をもとに定めることができます。したがって、建設工事以前に詳細な地盤データがない場合でも地震応答解析が可能です。

  4. 設計変更に速やかに対応できます
    杭支持建物の挙動の検討には、取り扱いの簡便さの点で有利な「修正Penzienモデル」を用いています。建物や杭の設計変更による耐震性能の違いや地盤改良による地震応答の違いを速やかに計算することができます。また杭の特性は、上部建物の荷重や杭の種類により変わりますが、その変化する杭の特性も考慮して耐震性能を評価できます。この特性を求めるツールも同じExcel上で用意していますので、種々の条件に対応することができます。
    これにより、発注者にも視覚的に分かりやすい耐震性能の評価説明が行えます。

以上

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大林組 東京本社 広報室企画課
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