有機塩素化合物トリクロロエチレン汚染土の浄化工法「ハイブリッド型バイオレメディエーション処理システム」を開発

プレスリリース

大林組は、有機塩素化合物であるトリクロロエチレン(TCE)による汚染土の浄化を対象として、攪拌ばっ気処理と生物処理を組み合わせ、迅速かつ安全に浄化を行う、ハイブリッド型バイオレメディエーション処理システムを開発しました。

クウェートでの油汚染土の生物処理をはじめとして数多くの汚染土浄化に実績のある大林組が、優れたTCE分解能力を持つ微生物を所有するトヨタ自動車の協力のもと、有機塩素化合物による汚染地盤に適用できる生物処理技術の開発に成功しました。

なお、ハイブリッド型バイオレメディエーション処理システムは「平成11年度環境庁(現在:環境省)土壌地下水浄化新技術実証調査」の対象技術であり、様々な測定を行い、技術を確立しています。

ハイブリッド型バイオレメディエーション処理システムは、TCEの気化しやすい性質を利用した攪拌ばっ気処理と、優れた分解微生物による生物処理を組み合わせた浄化技術です。通常の攪拌ばっ気処理では低濃度で処理効率が低下し、生物処理では高濃度の場合時間を要するという課題があります。今回のシステムは、この2つの処理を連続して実施することで処理効率の大幅な向上を実現しました
汚染サイトで掘削したTCE汚染土を通気システムを持つ密閉型のミキサーに投入し、通気しながら攪拌することでTCEの気化を促進し、土壌中の濃度を低減します。生物処理に適したレベルまで濃度が低下した段階で分解微生物を添加混合し、残留しているTCEを速やかに分解浄化します。
攪拌ばっ気処理で気化したTCEは回収した後に活性炭吸着などの処理を行うので、外部への放出はありません。また、使用する微生物は様々な安全性試験を実施して微生物自体の安全を確認したほか、処理した土壌中の他の微生物への影響も調査により問題ないことが明らかになっています。
ハイブリッド型バイオレメディエーション処理システムにより、攪拌ばっ気処理や生物処理の単独での処理で通常数日から1週間以上かかっていた浄化期間が、早ければ数時間のレベルにまで短縮し、なおかつ安全性の確認された微生物以外に化学品等の添加材を一切使用しないため、安全な処理が行えます。

ハイブリッド型バイオレメディエーション処理システムの特長は以下のとおりです。
  1. 微生物の力による浄化を中心とした環境にやさしい技術です。
    微生物による分解浄化を主体とするため、投入エネルギーが少ない技術です。2次汚染の心配のある化学品の添加は無く、処理後の土壌pHの変動もないため、処理土壌を埋め戻しても環境に負荷を与えません。密閉系の処理であるため汚染物質の外部への漏洩もありません。

  2. 迅速な処理が可能です。
    汚染物質の気化しやすい特性と高い分解能力を持つ微生物を利用してで浄化を完了する技術であり、物理処理・生物処理の利点を組み合わせたことにより、処理期間が従来技術と比較して著しく短縮できます。

  3. 対象濃度に上限がありません。
    従来は生物処理では高濃度の汚染には対応が困難でしたが、物理処理との組み合わせにより、生物処理に適した濃度を確保できることで対応可能としました。物理処理は高濃度であるほど効果が高いので、原理的には対象となる濃度に上限はありません。

  4. 安全な浄化技術です。
    使用する微生物の安全性は様々な試験で確認されています。また、微生物添加による生態系への影響は無いことも確認されています。汚染物質の分解による副生成物も残留しません。物理処理で発生する汚染物質の気化ガスは活性炭に吸着処理します。

  5. 処理後の土壌が使用可能です。
    添加する分解微生物数は自然に減少することが確認されています。処理後の土壌には汚染物質が残留せず、処理のために他の化学品を混合しないため、再利用に当たって問題がありません。

  6. 土質の影響を受けません。
    ミキサー内で処理に適した含水比に調整可能であるため、微生物処理が困難である粘性土壌も処理可能であるなど、土質の影響を受けません。

ハイブリッド型バイオレメディエーション処理システムは、TCEによる汚染土のほかに、分解微生物で分解可能な以下の化学物質による汚染土にも適用が可能です。

●(土壌環境基準対象物質)
・シス−1,2−ジクロロエチレン
・1,1−ジクロロエチレン
・ベンゼン
・ジクロロプロペン

●(その他有害物質)
・トランス−1,2−ジクロロエチレン
・トルエン
・キシレン
・ジクロロベンゼン
・フェノール
など

大林組は、ハイブリッド型バイオレメディエーション処理システムに関する研究開発を完了し、今後、汚染修復現場への適用を目的として技術展開を目指します。

以上

■この件に関するお問い合わせ先
大林組 東京本社 広報室企画課
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