国内最大の淡水化プラントで、海水浸透取水システムの設置を開始

福岡県の海水淡水化施設の建設が順調に進んでいます

プレスリリース

大林組は、福岡地区水道企業団発注、大林組・協和機電工業建設工事共同企業体が施工を進める海水淡水化施設の建設において、海底の砂の下から海水を取水する浸透取水システムの工事に着手しました。本システムは自然の力を有効活用したシステムで、周囲の環境に影響を与えず、低コストで良好な水質と安定した水量を確保できます。

人口や産業が集中する福岡都市圏では、近年の水需要の増加や不安定な気象状況などから、新しい水資源開発が求められていました。福岡地区水道企業団は、安定的な飲料水の供給を確保するため、国内最大の海水淡水化プラントの建設を2000年5月に、福岡市東区で開始しました。今回の海水淡水化プラントでは、海水を取水する施設と、海水を淡水化する施設他が建設されます。このたび、本施設の1/500のスケールで行われていた実証実験により、浸透取水システムや淡水化プラントの安定稼働、取水海水や生産水の清澄性や安定性、淡水化事業の環境との調和などについて、良好な結果が再確認されたので、プラント施設と共に、浸透取水システムの設置工事を開始しました。

大林組が提案する浸透取水システムは、海中に取水口が露出する従来型の直接取水方式ではなく、全ての構造物を海底の砂の中に埋設して、染み込んできた海水を集める取水方式です。海底の砂で海水がろ過されるので清澄な水質を安定して確保できます。また、取水速度のコントロールや波による海底洗浄を期待できる取水位置の決定等により、ろ過砂層の目詰まりを防止しています。さらに、魚卵や稚魚等を吸い込まないので、周辺海域の生物環境にも影響のないシステムです。
海水淡水化の方法には、蒸発法、電気透析法、逆浸透法などがありますが、逆浸透法は、処理プロセスが簡単で最も経済的な方法です。今回の浸透取水システムで取水された海水は、非常に清澄なため、従来、適用が難しかった低コスト型の限外ろ過膜(UF膜)の使用が可能となり、従来よりも遙かに清澄な海水が供給可能になりました。従って、従来型で必要な、1次、2次ろ過施設や、ろ過施設から出る汚泥などの廃棄物処理施設が不要となり、淡水化施設全体をコンパクトにできました。また、最近開発された回収率60%の逆浸透膜(RO膜)の採用や、深夜電力の活用、水質調整用の低圧逆浸透膜の採用などにより、水質の向上を図ると共に建設費とランニングコストの低減を実現しました。

今回浸透取水システムの設置工事に着手した海水淡水化施設の特長は次のとおりです。
  1. 淡水化施設の建設費を低減することができました
    海底の砂がフィルターの役目を果たし、海中の微細な懸濁物を取り除くので、清澄な水質と水量を安定的に取水することが可能です。そのため、直接取水方式では必要であった1次、2次ろ過施設、汚泥処理施設などが不要になると共に、淡水化施設の縮小が可能となり建設費を低減することができました。

  2. ランニングコストを抑えた淡水化施設です
    全ての構造物は海底下に埋設されているため、フジツボやイガイなどの付着生物が施設内へ進入することがありません。従って、取水施設の清掃作業や滅菌用の薬品注入にかかるコストを低減できます。さらに、プラント施設では最近開発された回収率60%の逆浸透膜(RO膜)の採用や、深夜電力の活用、滅菌や凝集用などの薬品の減少、汚泥処理費不要等によりランニングコストを低減しています。

  3. 周囲の環境への影響がありません
    魚卵や稚魚などを吸い込むことがないので、生態系などへの影響がありません。また、海底に構造物が突出しないため、完成後の漁業への影響はありません。

  4. 日量5万m3の飲料水を生産します
    従来40%程度であった淡水化率を60%まで向上させて、日量5万m3の飲料水の生産を実現しています。さらに、水質調整用の低圧逆浸透膜との併用により、従来の施設よりおいしい水になっています。

  5. 幅広い利用が期待できる浸透取水システムです
    浸透取水システムは、取水管の破損や生物付着による取水停止及び取水量の低下、原油流出や時化による取水水質の悪化などが発生しない取水システムなので、水族館や水産養殖施設の飼育海水、発電所の冷却海水、宿泊施設の冷熱源、水質浄化施設などに最適です。また、珊瑚礁などの海底面保護地では、シールドトンネル工法で浸透取水施設を施工することもできます。

今後、大林組は、海水浸透取水技術と淡水化技術を組合わせるエンジニアリングを、国や地方自治体、水不足に困窮している海外の国々へ積極的に提案していきます。

取水施設

以上

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大林組 東京本社 広報室企画課
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