「磁石ベルト式搬送システム」を開発・実用化 ~シールドトンネルの急勾配に対応、従来の2倍以上の登坂速度~

プレスリリース

  「磁石ベルト式搬送システム」を開発・実用化
シールドトンネルの急勾配に対応、従来の2倍以上の登坂速度
 
 

 (株)大林組は三和テッキ(株) (本社:東京都品川区、社長:手塚 和義)と共同で、 キャタピラ状の磁石ベルトを鋼製のガイドに吸着させ、 その磁気摩擦力で駆動力、制動力を得る新しいトンネル用資材搬送システムを開発しました。 シールドトンネルの急勾配でも従来の2倍以上の速度で安定した登坂走行が可能で、 工期の短縮と安全性を向上します。

 一般的に、シールドトンネル工事では資材の搬出入に車輪走行式の バッテリー機関車を利用します。 セグメント上に枕木、軌道(レール)を敷設し、 その軌道上をモーター駆動による車輪走行式の機関車が非動力の台車を牽引して 資機材の搬出入を行います。車輪走行式機関車は車輪とレールの摩擦力を利用して駆動、 制動を行うため摩擦力を超える急勾配(斜度5%以上)では走行できず、急勾配用に補助装置を使用します。 ラックと呼ばれる特別な軌道をピニオンと呼ばれる車輪(歯車)が噛みながら走行する ラック・ピニオン機構やウインチとワイヤーで車両を牽引する 機構を併用するのが一般的ですが、これらの急勾配を走行するための補助装置は速度が遅いため、 資機材の版出入の時間は急勾配部の速度に左右されます。
近年、都心部では、地下構造物の輻輳化により大深度でのシールドトンネル工事が増える傾向にありますが、 平成12年5月19日に「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」が成立したことにより、 今後益々大深度の利用が増えることが予想されます。大深度でシールドトンネルを築造する場合、 深い立坑は大規模な土留工事が必要となるため、浅い立坑を築造した後、急勾配の斜坑を設ける方法がより経済的な方法です。 今後、大深度でのシールドトンネル工事には、急勾配でも効率良く安定して走行できる搬送システムが求められます。

 今回開発した「磁石ベルト式搬送システム」は、 トンネルの急勾配に対応した全く新しい搬送システムです。 磁石ベルト動力車と複数台の被牽引台車で構成されており、 タイヤ走行式で、枕木、レールを敷設する必要はありません。 下部セグメントに直接リアクションビームと呼ばれるガイド(H鋼)を1条敷設し、 リアクションビームを機関車下部の2つのキャタピラ状の永久磁石のベルトが挟みます。 リアクションビームの両側面に磁気により吸着された磁石ベルトが回転することにより 機関車が駆動力を得て前進、後退をします。 機関車の安定はタイヤにより保持されます。 摩擦力を利用した従来の車輪走行式とは異なり、脱線の心配がなく、 従来の2倍の登坂速度で、急勾配でも安定した走行が可能です。

 今回開発した「磁石ベルト式搬送システム」の特長は次のとおりです。

  1. 急勾配での高速走行が可能
    従来急勾配で使用されるラックピニオン式やウインチ式の遅速な走行機構と異なり、 最大25%の斜度を従来の2倍以上の登坂速度で、安定して、走行できます。 また、急曲線での走行性は従来の車輪走行式と同等です。(最小曲率15mR)

  2. 車両が軽量でかつ牽引力が大きい
    従来のように摩擦力を確保するために自重を増加する必要がなく、 軽量でかつ牽引力が大きく長距離急勾配でも安定した走行が可能です。

  3. 安全性が高いシステムです
    従来の車輪走行式機関車はレール上に水分や油分が付着していると 安定した走行ができず、勾配部では暴走の危険さえあるため、 走行前や走行中のレール確認が重要で欠かせない作業でしたが、 「磁石ベルト式搬送システム」は永久磁石を使用しているので、 リアクションビームに水分や油分が付着していても安定して走行でき、 暴走などの危険が無い安全なシステムです。

  4. 枕木、レールの敷設が不要で、撤去が短期間でできます
    下部セグメントに直接H鋼を1条敷設するだけなので、 従来の枕木とレールの敷設は不要で、撤去が短期間でできます。

 今後、大林組では今回開発した「磁石ベルト式搬送システム」を、 今後増加が予想される急勾配のシールドトンネル工事に積極的に導入し、 工期短縮と安全性を追求して行きます。

以上
 
  ■この件に関するお問い合わせ先
大林組 東京本社 広報室企画課
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