(株)大林組（本社：東京都港区、社長：向笠愼二）は、業界で初めてのコンクリート製の制震装置「RCカラムダンパー」を開発し実用化しました。 鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート建物を対象とした制震装置で、強風や小地震時には間柱として建物の剛性を高め、 大地震時には柱・梁よりも大きく変形し、損傷を集中させることで減衰性能を発揮します。日本建築センターの評定を既に取得し、 横浜市西区に建設予定の超高層鉄筋コンクリート集合住宅「(仮称)ライオンズタワー横浜」へ初めて適用します。

  鉄筋コンクリート建物の地震などの揺れを低減する方法には様々な技術があります。 中低層の建物には、積層ゴムにより地震のエネルギーを絶縁する方法や架構内に粘性ダンパーや鋼材ダンパーを設け 建物の変形に応じて震動エネルギーを吸収して揺れを低減する手法がしばしば用いられます。 高層建物は高強度鉄筋と高強度コンクリートにより柱と梁を堅強なものにしたり、耐震壁を設けるなどの方法により耐震性能を確保するのが一般的ですが、 そのために柱や梁が太くなり、耐震壁を設けることで開口部の設置に制限があることがあります。 近年は、高強度コンクリートの開発により、鉄筋コンクリート造の住宅向け高層建物が増加しつつあり、平面計画や間取りへの影響が少ない、 風揺れから大地震までを効果的に抑える制震装置が求められています。

  今回、大林組が開発した「RCカラムダンパー」は揺れのエネルギー吸収に優れた高靱性の柱3～5本をスタブ（STABLE WALL） と呼ばれる剛性の高い上部の垂壁材と下部の腰壁材に固定してプレキャスト化した業界初のコンクリート製間柱型ダンパーです。 設置は、上下のスタブをそれぞれ上下の梁にPC鋼棒により固定して行います。 風揺れから地震まで様々な揺れを効果的に抑える「RCカラムダンパー」はコンクリート製による低価格化とプレキャスト化による施工性向上も実現しています。 今回、初めて適用する横浜市西区に建設予定の超高層ＲＣ集合住宅では各階に2ヶ所の「RCカラムダンパー」を設置することで大地震時の揺れを 最大2/3に低減します。

今回開発した「RCカラムダンパー」の特長は次のとおりです。

1. 風揺れから地震まで様々な揺れを効果的に抑えます。
   高靱性の柱は、主筋をＸ型に配筋し、帯筋を密に配筋することで粘り強さを確保しています。 強風や小地震時には建物の剛性を高め、居住性を高めます。大地震時には、上下の梁と連動して変位するスタブの間で、 間柱に柱や梁の変形の約3倍の変形が集中することで地震のエネルギーを吸収して減衰性能を発揮し、建物の揺れを2/3程度に抑えます。
2. 省スペースで間取りへの影響を最小限にします。
   設置に必要な面積がダンパー１個につき厚さ30～40cm、幅120～150cmなので壁内に設置でき、間取りへの影響を最小限に抑えることができます。 また、間柱型なので設置した壁にドアや開口部を設置でき、平面計画上の制約も少なくできます。
3. 耐久性・耐火性に優れ、取付け・取替えも簡単です。
   鉄筋コンクリート製品なので耐久性・耐火性に優れ、従来の制震装置に比べ非常に割安です。また、プレキャスト化により簡単に取付け、取替えができます。
4. 新築建物のほか、既存建物の内部補強、外部補強にも適用でき、しかもメンテナンスフリーです。
   大地震によりダンパー部分が損傷を受けない限りメンテナンスが不要です。また、大地震後でも損傷の程度によりダンパーの補修や取り替えが可能です。

　今後、大林組では、今回開発した「RCカラムダンパー」を高層だけでなく、鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート造の新築集合住宅等や既存の耐震補強にも積極的に提案して行きます。

「工事概要」

施工場所：	神奈川県横浜市西区楠町
発注者　：	株式会社大京
設計者　：	株式会社安宅設計（一般）、株式会社大林組東京本社一級建築士事務所（構造）
施工業者：	株式会社大林組
工期　　：	平成12年5月～平成14年2月
構造規模：	鉄筋コンクリート構造 地上26階、地下1階、延床面積 20,454m2 建物高さ 79.95m、建築面積 1,707.75m2
「ダンパーの概要」	設置個数：各階2箇所、4階～18階に設置、計24ヶ所