サイクルスラブで現場作業を高率化
株)大林組は、 真空脱水工法を利用することで、工事現場内で床用の大型ハーフプレキャスト版(PCa版)を効率的なサイクルで製作する新しい工法を開発しました。「キヤノン取手事業所98A・新B−1棟新築工事」「川口駅周辺地区(飯塚2丁目地区)施設建築物等工事」において、 工期の短縮と現場作業の大幅な省力化を実現しました。 製作工程は次の工程を循環(サイクル)します。
製作工程は次の工程を循環(サイクル)します。
1)型枠を組立、剥離剤を塗布した後、配筋、コンクリートを打設します。
2)コッター型を押し込み、1時間程度の養生をした後、遮水シートを敷き込みます。
3)真空ポンプによる脱水後、遮水シートを除去し、コッター型を除去します。
4)直ちに上面で作業が可能であり、ベニヤ板を載せればその上でさらに もう一枚製作できます。養生完了後、翌朝に型枠を解体し、取付けることができます。
スラブの施工法の一つとして、支保工・型枠工事を省力化できるコンクリート 合成スラブ工法は一般的に採用されています。
コンクリート合成スラブ工法は、通常、工場で製作されたPCa版を工事現場まで 運搬してから、そのPCa版を床下部の型枠とし、その上に現場打ちコンクリートを 打設しPCa版と一体化した合成スラブ(合成コンクリート床)を形成する工法です。 合成スラブの下部となるPCa版はハーフPCa版と呼ばれます。 打継面となるPCa版の上面には、現場打ちコンクリートとの一体化をはかるため 目粗しや、溝、凹凸状コッターを設けます。
この工法では、通常、PCa版をPC工場で製作し、工事現場まで運搬していましたが、 その手間や運搬できる大きさなどに制約がありました。
今回開発した「サイクルスラブ」は、真空脱水工法を利用した工事現場内で 製造するハーフPCa版です。同一盤上で1日2枚以上繰り返し製作できる 特長があります。この同一盤上で複数枚繰り返し製作できることから、 狭い敷地でも可能です。
ハーフPCa版の上面(打継ぎ面)にはコッターを成形するために コンクリート打設直後にゴム型を上から押し込み、遮水シートをかぶせ 真空ポンプで脱水を行います。打継ぎ面全面にわたってコッターを成形します。 約10分程度で約15%の余剰水を脱水することができ、コッターの成形も容易です。 脱水後は、直ちにベニヤ板を載せてさらに次の版を製作することができます。 製作した翌日には吊り込みができるので、非常に高率的なサイクルで ハーフPCa板を製作できます。
工事現場内での製作なので、運搬による制約を受けず、大型のPCa版を 製作することができます。結果的にクレーン荷揚げの回数が減り、 PCa版どおしの目地処理作業も無くなります。
今後は、狭い敷地においても「サイクルスラブ」を積極的に適用し、 工期の短縮と現場作業の省力化に取り組んでいきます。
・今回新しく開発された工法の特長
以上
コッター:
現場打設のトップコンリートとの一体性を向上させるため、 現場打設のコンクリートが入り込むように設けられた窪み。
真空脱水工法:
打ち込み直後のコンクリート面に遮水シートをかぶせ、真空ポンプにより、 シート下面を真空状態にし、不必要な水分を除去する工法。
1.打継ぎ面のコッター成形が簡単
真空脱水後、打継ぎ面となる上面のコッターを容易にすぐ除去できます。 しかも、コッターの型くずれが無いので合成スラブとしての一体性が向上します。
2.初期強度が増し、品質が向上
打継ぎ面の余剰水を脱水することで、初期強度が最大20%増加します。 また乾燥収縮量が約15%減少します。
3.狭い敷地でも現場での製作が可能
真空脱水後、直ちに上面で作業が出来るため、ベニヤ板を載せてさらに1枚を 製作することができます。狭い敷地においても現場での製作が可能です。
4.大型の製作が可能
運搬上の制約を受けないので大型の製作が可能です。 結果としてピース数が減り、クレーンの荷揚げ回数が削減できます。 また、版どおしの目地処理も不要となります。
5.二方向床扱いができる
市販PCa版は1方向の床となるので直交方向に補強鉄筋を入れる 必要がありますが、サイクルスラブは構造上、在来工法のスラブ構造同様に、 2方向の床として扱える合理的な構造です