鋼製ダンパー・ブレースを用いた鉄道高架橋下部工を実用化
(株)大林組は、 (財)鉄道総合技術研究所と共同で開発した鋼製ダンパー・ブレースを用いた鉄道高架橋下部工について、新耐震設計標準に基づく実用化のために作成された設計指針の説明会を、東京と大阪で多数の鉄道関係者を集めて行いました。
平成7年の阪神淡路大震災での被災経験に基づき、鉄道構造物の新しい耐震設計標準が発行されました。その中では、構造物の耐震性能を詳しく照査するように定められたほか、地震時の列車走行性を損なうような過大な変位を 生じないよう検討する旨の項目が追加されています。
このような要求に対応した高架橋を実現するため、大林組は (財)鉄道総合技術研究所と共同で、鋼製ダンパー・ブレースを用いた鉄道高架橋下部工の共同開発を行い、 設計指針の作成により同技術の実用化が可能となりました。7月15日の東京での開催に続き、11月30日に大阪での説明会が 鉄道各社の関係者をはじめ約90名が参加し、行われました。
「新型鉄道高架橋下部工」は、鉄筋コンクリート架構(門型橋脚)の内側に鋼製ブレース(筋かい)と、その頂点に鋼製ダンパー(エネルギー吸収材)を組み込んだものです。鉄筋コンクリート架構に鋼製ダンパー・ブレースを直接組み込んだのは、土木・建築分野を含めて初めての試みです。また、ここで用いられる鋼製ダンパーは、架構や鋼製ブレースと比べて柔らかく、 ねばり強い鋼材でできています。
鋼製ブレース・ダンパーを用いた鉄道高架橋下部工の特徴は次のとおりです。
1.シンプルな高機能制振下部工です。
鋼製ダンパーがせん断塑性変形することにより、大きなエネルギーが吸収され、 この減衰効果により耐震性能が向上します。また、鋼製ブレースの剛性が高いため、 架構のスリム化を図ることや基礎梁をなくすことも可能となり、 工費・工期削減に寄与します。
また、地震時の損傷を鋼製ダンパーに集中させるため、主要構造部材である架構・ 鋼製ブレースの健全性を確保でき、耐震性能の高い下部工を設計することができます。
2.自由度の高い耐震設計が可能です。
所要の剛性を確保した上で、耐力と変形性能のバランスを比較的自由に選ぶことができるため、自由度の高い耐震設計が可能です。
3.地震時列車走行性が向上します。
鋼製ブレースとダンパーの効果により下部工全体の剛性と減衰性が高まるため、 地震時の水平変位を小さく抑えることができ、列車走行性が向上します。
4.被災後の復旧が容易です。
地震時の損傷が鋼製ダンパーに集中するため、必要な場合、 鋼製ダンパーの取り替えによる容易な復旧が可能です。
また、架構に残留変形が生じた場合でも、それを矯正するジャッキの反力を 鋼製ブレースに取らせることができ、復旧作業を簡単に行うことができます。
5.耐震補強工法にも利用できます。
既存高架橋の耐震補強工法としても利用できます。