IoT・AIを活用したスマートビルマネジメントシステム「WellnessBOX®」を東京都内のテナントオフィスビルに国内初適用

2017年12月から実証運用を開始し、その効果を確認しました

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、IoT・AI技術を用いて働く人の「快適性」「健康」「利便性」「安全性」など、ウェルネスの向上を図りつつ、最適な建物管理を実現するスマートビルマネジメントシステム「WellnessBOX」を開発しました。

スマートビルマネジメントシステム「WellnessBOX」の概念図

大林組グループの大林新星和不動産株式会社(本社:東京都千代田区、社長:齋藤正博)が所有するテナントオフィスビル「oak神田鍛冶町(2017年8月竣工、東京都千代田区)」に本システムを実装し、2017年12月からの実証運用でその効果が確認されました。建物利用者のウェルネスに配慮した各種サービスを提供するビルマネジメントシステムが適用されたのは、国内初となります。

近年、生産年齢人口の減少に伴って優秀な人材を確保するため、また、喫緊の課題である「働き方改革」の実現に向け働く人の知的生産性を向上させるために、オフィスには快適性や健康などウェルネスへの配慮が求められるようになっています。

大林組では、建物利用者の健康増進活動や環境配慮行動に働きかけ、快適、健康、安全・安心を実現する建築計画、運用・管理手法を「ウェルネス建築」と呼び、その実現に向け必要な技術開発に取り組んできました。その一環として開発されたのが今回の「WellnessBOX」です。

本システムはIoT技術を用いて、建物設備のセンサーなどから得られる建物内外の多様な情報や建物利用者一人ひとりの快適さに関する情報、そしてビーコン(※1)による建物利用者の位置情報を、インターネットを介してクラウドに集約し、AI技術を活用することで、従来は困難であった建物利用者一人ひとりへの最適な環境の提供と、クラウドに蓄積した情報を活用したきめ細やかな建物制御による省エネルギーを実現するビルマネジメントシステムです。さらには本システムの導入により、建物利用者の要望に応じて遠隔地からでも建物設備の設定が調整できるため、建物管理者の負担も軽減されます。

「WellnessBOX」と情報集約プラットフォーム「BIMWill」の概要を動画でご覧いただけます

(動画再生時間:2分36秒)

   

「WellnessBOX」の主な特長は以下のとおりです。    

ウェルネスを向上させる建物利用者メニュー

ウェルネスに配慮した建物・室内環境評価基準であるWELL認証(※2)の評価項目は空気、水、食物、光、フィットネス、快適性、こころの7領域・105項目となっていますが、本システムでは、光、フィットネス、快適性、こころの4領域の評価指標を向上させるメニューを用意し、建物利用者に提供しています。テナント企業の協力を得て行っている実証運用では、本システム利用によって快適性が向上したというアンケート結果が得られています。

スマートビルマネジメントシステム「WellnessBOX」の概念図

建物利用環境情報のオープン化

建物利用者のウェルネスの向上を図りつつ、最適な建物管理を実現するため、本システムでは、建物設備に標準装備されているセンサーなどから取得した約6,000点に及ぶ管理情報をオープン化し、建物利用者のビーコンによる位置情報や快適感申告の情報と合わせてクラウドに集約することにより、設備の最適制御を行っています。

これにより、例えば照明の人感センサーを利用して空調の制御を行ったり、建物利用者が携帯するビーコンの情報を利用して照明の減光制御を行うなど、従来は困難であったきめ細かい環境制御によって、建物利用者一人ひとりに優しい快適環境の提供を実現しました。また、エネルギー消費量についても本システムの導入により約5%削減(対BELS(※3)5つ星計算値)されたことを確認しています。

現在は、これまで大林組が蓄積してきた建物管理に関するデータやノウハウを活用し、本システム用に独自開発したアルゴリズムを用いて設備制御を行っていますが、今後は「WellnessBOX」に蓄積されたデータを基にAIを用いてチューニングしていくことにより、快適、健康、便利、安全・安心、省エネルギーといった多岐にわたる要求に対して、さらなる最適解を導き出していく予定です。

ワンストップサービスの提供を実現

本システムでは、建物設備を直接制御するBAS(Building Automation System)は建物内に設置していますが、その稼働情報や制御情報は、建物利用者の申告情報と同じくクラウドに集約されます。そのため、建物利用者はインターネットにつながったスマートフォン、タブレット端末、パソコンなどを通して、同一画面からワンストップでさまざまなサービスを享受でき、遠隔地からの利用も可能になります。また、建物管理者にとっては日々の管理の負担軽減につながります。

WellnessBOXの操作画面(空調制御の例)
WellnessBOXの操作画面(空調制御の例)

本システムは、新築、既存を問わず複数の建物に対して利用できるため、建物所有者は同様のサービスを低コストで導入することが可能です。さらに、本システムから得られる稼働状況などのさまざまなデータを、建設時のBIMモデルを活用した建物情報プラットフォーム「BIMWill」(開発者:大林組)と共有することで、機器の劣化状況や更新時期の予測精度を向上させることができ、故障する前にメンテナンスや更新を行う予防保全のさらなる効率化が図られます。

投資家が投資先企業に対して環境・社会・ガバナンスへの配慮を求めるESG投資(※4)が、欧米を中心に世界的潮流となりつつある中で、不動産の分野においては、不動産そのものの環境負荷の低減だけではなく、執務環境の改善、知的生産性の向上、優秀な人材の確保などの観点から、働く人の健康、快適性などに優れた不動産への注目が高まっています。

大林組は、今後もIoT・AI技術を活用して、良質な建物、サービスの提供に貢献していきます。

  • ※1 ビーコン
    ここでは、無線LANに対応した携帯型の信号発信機のことを示す
  • ※2 WELL認証(WELL Building Standard)
    DELOS社により創設された認証制度。建物の性能としてLEEDやCASBEEで評価されてきた 環境・エネルギー性能と対になるべく、建物内で暮らし、働く居住者の健康・快適性に焦点を当てた世界初の建物・室内環境評価システムであり、特に居住者の身体に関わる評価ポイントについては、環境工学の観点のみならず医学の見地から検証が加えられている。空気、水、食物、光、フィットネス、快適性、こころの7領域・105項目で建物・室内環境を評価し、必須項目、オプション項目で獲得したポイント数のレベルに応じてプラチナ、ゴールド、シルバーの認証が付与される
  • ※3 BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)
    2013年10月に「非住宅建築物に係る省エネルギー性能の表示のための評価ガイドライン(2013)」が国土交通省において制定され、当該ガイドラインに基づき第三者機関が非住宅建築物の省エネルギー性能の評価および表示を適確に実施することを目的に制定された建築物の省エネルギー性能表示制度
  • ※4 ESG投資
    環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視、選別して行う投資。国連が2006年、投資家がとるべき行動として責任投資原則を提唱し、投資判断にESGの視点を組み込むことなどを求めたことをきっかけに、欧米の機関投資家を中心に、企業の投資価値を測る評価項目として関心を集めるようになった。近年、日本においても、企業のESG分野への取り組みを考慮する「ESG投資」が急速に広がってきている

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。