道路橋床版補強工法「タフスラブ・ラピッド工法」に適用可能なコンクリート材料を開発

高じん性はそのままに、施工条件、コストなどに応じた最適な材料を選択可能に

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、株式会社トクヤマ(本部:東京都千代田区、社長:横田浩)、萩原工業株式会社(本社:岡山県倉敷市、社長:浅野和志)、株式会社トクヤマエムテック(本社:東京都中央区、社長:五島勉)、株式会社テクノ・ブリッド(本社:東京都渋谷区、社長:青木茂)と共同で、2011年に開発した道路橋床版補強工法「タフスラブ・ラピッド工法」に適用可能な超速硬・高じん性(※1)コンクリートを新たに開発しました。

全国に道路橋は約70万橋ありますが、そのうち建設後50年を経過する橋梁の割合は、現在の2割から、2023年には4割以上に達すると見込まれています。高度経済成長期以降に集中的に整備した橋梁の耐用年数は60年~70年程度と推定されていますが(※2)、既に近年、経年や交通荷重の増大により、道路橋の床版の劣化が顕在化しており、有効な補強対策が求められています。補強には、既設床版コンクリートの上面に、新たに鋼繊維補強コンクリート(※3)を打設し、新旧コンクリートを一体化させることにより、せん断耐力を回復させる上面増厚工事が一般的です。

しかし従来の施工法では、硬練りの鋼繊維補強コンクリートを使用するため、専用の大型機械や設備が必要であり、緊急性の高い場合や小規模工事の場合、それぞれ機械の手配や輸送に時間がかかる、機械の設置場所を確保するために道路を通行止めにしなくてはならない、などの課題が生じていました。そのため、コンパクトな機械設備で迅速に施工できる技術が求められていました。

大林組が2011年に開発した超速硬高じん性モルタルを用いた道路橋床版補強工法「タフスラブ・ラピッド工法」は、このような背景を踏まえ、流動性が高くポンプ圧送可能なプレミックスモルタル「オートモルスーパー」を増厚材として使用することにより、施工に必要な機械設備のコンパクト化と、施工性の向上を実現したものです。

タフスラブラピッド工法による道路橋床版補強の様子

タフスラブ・ラピッド工法による道路床版補強の様子

そして今回、実績を積んできた「オートモルスーパー」に加えて、同工法に適用可能な超速硬高じん性コンクリート「オートモルスーパーG」および「オートモルスーパーGR」を新たに開発しました。「オートモルスーパー」は高流動なモルタルタイプですが、モルタルに骨材(※4)を加えることで価格や性能を三段階に設定し、劣化状況や施工条件などに合わせて最適な材料を選択できるようにしました。

新たな材料を加えた「タフスラブ・ラピッド工法」の特長は以下のとおりです。

  1. 材料の選択肢が拡大

    既存の「オートモルスーパー」は、流動性の高いモルタルに特殊ポリプロピレン繊維を混入し、鋼繊維補強コンクリートと同等以上のじん性を実現したものです。高流動なため、鉄筋の存在する補修箇所など、より充てん性が求められる場合に適しています。

    「オートモルスーパーG」は、モルタル配合に粗骨材を混入し、特殊ポリプロピレン繊維の種類を変更することで、じん性を確保しつつ低収縮化・低価格化を実現したもので、大きな面積でたわみや変形の少ない箇所に最適です。

    「オートモルスーパーGR」は、「オートモルスーパーG」に加え、細骨材に特殊骨材を使うことで軽量化するとともに、静弾性係数(※5)を既存床版と同程度にすることで一体性を向上させたものです。「オートモルスーパーG」では対応できない薄肉の既存床版や、たわみの大きい箇所にも適用できます。


  2. 高じん性を有し、薄層施工が可能

    オートモルスーパーシリーズには、特殊ポリプロピレン繊維を使用しているため、曲げやたわみに対する優れた耐力を発揮します。さらに、「オートモルスーパー」は最小厚さ20mm、「オートモルスーパーG」および「オートモルスーパーGR」は最小厚さ30mmでの施工が可能です。寒冷地などでの凍結融解作用による床版表面の損傷は、表面20~30mm以内に多く見られますが、最小厚さ50mmを標準とする鋼繊維補強コンクリートではこれまで薄層の補修対応ができませんでした。タフスラブ・ラピッド工法はこのような場合でも使用できます。

    タフスラブ・ラピッド工法適用材料のラインナップ

    タフスラブ・ラピッド工法適用材料のラインナップ


  3. コンパクトな設備で迅速な施工が可能

    オートモルスーパーシリーズは、4tユニック車で運搬可能な汎用のミキサーで製造でき、仕上げは簡易型フィニッシャーで施工可能なため、専用の大型機械の手配などは不要です。いずれも従来工法で使用する鋼繊維補強コンクリート同様、道路橋床版の上面増厚に関するNEXCO規格値(打ち込み後3時間で24N/mm²以上の圧縮強度、製造後40分以上の作業時間)を満足しています。

大林組は、国土強靭化の要請に合わせ、材料ラインナップをそろえた「タフスラブ・ラピッド工法」を県道、国道、高速道路などの橋梁床版の補修・補強に積極的に提案することで、今後も道路構造物の安全・安心およびサービスの継続に貢献します。

高じん性で優れた耐久性を持つオートモルスーパーシリーズ

高じん性で優れた耐久性を持つオートモルスーパーシリーズ
(写真はオートモルスーパーGの施工試験の様子)

※1 じん性
破壊に対する材料の抵抗性のこと。じん性が高い材料は粘り強く、衝撃による亀裂やひび割れが生じにくくなる。自動車走行時に荷重や振動を受ける道路材料としては耐久性が向上する

※2 「道路橋の寿命推計に関する調査研究」(平成16年 国土技術政策総合研究所資料)

※3 鋼繊維補強コンクリート
鋼繊維をコンクリートに混入したコンクリート材料

※4 骨材 
コンクリートなどを作る際に用いられる砂利などの材料。粒径の大きなものは粗骨材、小さなものは細骨材と呼ばれる

※5 静弾性係数
ヤング係数とも呼ばれ、荷重による物体の変形のしやすさ、しにくさを表す指標。補修材料の静弾性係数を既存の床版の静弾性係数に近づけることで、荷重による変形が床版と同一化する(一体化して変形する)ため、曲げやたわみに対するひび割れや剥離が生じにくくなる。オートモルスーパーGRの静弾性係数は、2015年7月に東日本・中日本・西日本高速道路株式会社から公表された「構造物施工管理要領」(床版上面補修材料)の規格を考慮

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014

トクヤマ 経営企画室 広報・IRグループ
TEL 03-6205-4832

萩原工業 BCI事業部 国内営業課
TEL 03-3254-4911

トクヤマエムテック
TEL 03-5643-3601

テクノ・ブリッド
TEL 03-6416-5254

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。