水素いま注目を集める次世代エネルギー
とどける
- 水素とは
- 大林組の水素事業
- 国内の取り組み
国内初、地熱でグリーン水素を製造、供給へ [大分県玖珠郡九重町] 水素搬送システムの構築でゼロカーボンシティ実現へ [福島県浪江町] 水素CGSで熱と電気をとどけるスマートコミュニティ構想 [神戸ポートアイランド]
- 海外での取り組み
グリーン水素サプライチェーン構築の未来構想 [ニュージーランド タウポ] オークランド港湾会社との水素ステーション事業 [ニュージーランド オークランド] ニュージーランドにおける交通の要衝であるウィリ(南オークランド)での水素供給事業 [ニュージーランド ウィリ] グリーン水素の製造・輸送・利活用に関する実証 [ニュージーランドおよびフィジー]
水素とは
水素は、その名の通り「水の素」です。
石油や石炭に多く含まれる炭素は、燃焼すると酸素を結びつき、温室効果ガスの一つであるCO2を発生させますが、水素は燃焼すると、酸素と結びつき、水を発生させます。
つまり、水素を活用することは、利用時に温室効果ガスを発生させないという大きなメリットがあります。
水素による発電や、車両・一般重機・船舶など、さまざまな用途での活用が具体化してきており、未来社会のエネルギーとして注目を集めています。
また、水素の活用が進むことで、エネルギーの自給自足も期待されます。
大林組の水素事業
国内の取り組み
国内初、地熱でグリーン水素を製造、供給へ
[大分県玖珠郡九重町]
再生可能エネルギーの一つである地熱は、国内で安定供給が可能なエネルギーとして期待されており、日本のグリーン成長戦略においても重要なエネルギー源として位置付けられています。
しかし、発電施設が山間部に位置することが多く、発電できたとしても送電網に接続する「系統連系」が物理的に困難なケースもあります。
こうした背景から、大林組は、大分県玖珠郡九重町において、地熱由来の電気を系統連系ではなく水素製造のためのエネルギーとして利用する、つまり電気を「運べるエネルギー」としての「水素」に変換して有効利用を実現する社会実装研究に取り組んでいます。
2021年7月、地元の大分地熱開発株式会社の協力のもと、地熱発電施設に水素製造プラントを併設し、地熱発電電力(125KW)を用いてグリーン水素の製造(10Nm³/h)を開始しました。
地元の脱炭素化ニーズに応える
製造したグリーン水素は、主に地元企業の脱炭素実証事業に利用され始めています。
2021年7月18日、水素製造プラントの開所式とともに、ヤンマーパワーテクノロジー株式会社が開発する燃料電池搭載型船舶の燃料として最初の出荷を行いました。
さらに、2021年7月31日、8月1日の2日にわたって大分県日田市のオートポリスで開催された自動車レース「スーパー耐久シリーズ第4戦」で、トヨタ自動車株式会社の「水素エンジン搭載カローラ」向け燃料の一部として、大林組製造の水素が採用されました。
業界の枠を超えたこの取り組みで、新たな水素社会への第一歩を踏み出しました。
関連情報:地熱発電およびグリーン水素製造の実証プラントが完成、地産地消に向けて出荷を開始(2021年7月18日付)
エネルギーマネジメントシステムの構築
グリーン水素の利用促進においては、需要先の利用状況や需要予測に基づいたプラントの運転調整、効率的な搬送計画を一元的に管理できるシステムが欠かせません。
大林組は、このエネルギーマネジメントシステム(EMS)の構築にも力を入れており、地元の脱炭素化のニーズに対する最適なソリューションを提供します。
水素搬送システムの構築でゼロカーボンシティ実現へ
[福島県浪江町]
福島県浪江町では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、2020年4月から世界最大級の太陽光エネルギーによる水素製造プラント(FH2R)が実証稼働しています。開所に先立ち、浪江町はゼロカーボンシティ構想を宣言。浪江町産水素を活用した「水素社会実現の先駆けとなるまちづくり」を推進しています。
その一環として、大林組は、FH2Rで製造された水素をカードル(ボンベの束)を使って低コストに搬送、供給するサプライチェーン構築実証事業(環境省委託事業)に取り組んでいます。2022年4月、水素需要拠点の設備設置工事が完了したことに伴い、1年間の実証運用を開始しました。この運用を通じて、地域全体での水素供給ネットワークの最適化と、水素の魅力伝達や需要喚起、拡大を図ります。
最適化に向けては、FH2Rと複数の需要拠点となる施設を連携させ水素需給量や搬送状況を遠隔監視するとともに、GPSでトラックの位置情報を把握することで自動的に搬送計画を作成、搬送指示を出す仕組みを構築しており、これら一連の搬送管理には大分県玖珠町九重町の取り組みで開発したエネルギーマネジメントシステムの機能を拡充させた「最適運用管理システム」を投入しています。
水素CGSで熱と電気をとどけるスマートコミュニティ構想
[神戸ポートアイランド]
CGS(コージェネレーションシステム)とは、発電装置で電気をつくると同時に、その際に発生する熱も回収して施設に同時供給するシステムです。
発電燃料には、一般的に天然ガス、石油、LPガス、バイオマスなどが使われることが多いのですが、水素CGSはその名のとおり、水素を使用します。発電装置にはガスタービンを用いており、水素の燃焼時に発生する高温高圧のガスでタービンを回して発電するとともに、排熱も回収して給湯や暖房などに利用します。
神戸ポートアイランドでの取り組み
大林組は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの助成を受け、川崎重工業株式会社と共同で、神戸ポートアイランドにおける水素CGS活用スマートコミュニティ技術開発事業に取り組んでいます。関西電力株式会社や神戸市の協力も得ながら進める実証事業になります。
大林組は、この実証事業で、燃料である水素と生み出される電気や熱をコントロールする統合型エネルギーマネジメントシステム(EMS)の開発を担っています。
複数の建物に熱電を同時に供給するためには、使用する「水素」、つくり出した「電気」と「熱」、供給先の利用状況の把握と需要予測などを統合管理し、経済性や環境性の観点から最適に制御できる仕組みが必要となります。
2018年、この統合型EMSを用いて、世界で初めて、市街地において水素燃料のみによる熱電を近隣の4施設(神戸国際展示場、ポートアイランドスポーツセンター、下水処理場、中央市民病院)に同時供給することに成功しました。
大林組は、今後も、知見とノウハウと蓄積し、高度な統合型EMSの確立によって水素社会の実現に貢献します。
海外での取り組み
グリーン水素サプライチェーン構築の未来構想
[ニュージーランド タウポ]
ニュージーランドは、地熱発電容量が1GWを超える世界有数の地熱発電大国です。その北島北部の最大商都オークランドと北島最南端の首都ウェリントンの中間に位置するタウポに地熱発電を活用した水素製造・水素製造プラント(運営:合弁会社ハルシオンパワー)を建設し、2021年3月、グリーン水素の製造を開始しました。
関連情報:Tuaropaki Trustと共同研究契約を締結し、水素製造プラント建設に着手しました(2018年12月27日付)
ニュージーランド国内で初のメガワット級水素製造プラントによる水素の試験販売を開始(2021年12月14日付)
同国初のメガワット級水素製造プラントで、年間100tのグリーン水素(燃料電池自動車の燃料換算で1,000台分に相当)を製造し、貯蔵、搬送、利用に至るサプライチェーン全体の構築と事業性の検証を行います。2021年12月には製造や運搬にかかるコストを踏まえた価格設定とその社会受容性を確認するため、製造したグリーン水素の試験販売に着手しました。これらの取り組みは、現地のTuaropaki Trust(トゥアロパキトラスト)社との共同事業となります。
海外輸出ビジネスへの展開
製造したグリーン水素は、公共交通機関や物流施設などの車両用燃料、化学薬品工場の原材料といった産業用途での活用のほか、水素ステーションにも供給する構想であり、汎用性の高い供給網の確立をめざします。
そして、将来的にはニュージーランド国内から日本を含む海外への輸出を視野に事業を展開します。
グリーン水素を水素キャリアプラントに運び、液化水素(LH2)、アンモニア(NH3)などに変換、高密度化して海上輸送する構想で、2025年頃の開始をめざします。
オークランド港湾会社との水素ステーション事業
[ニュージーランド オークランド]
大林組は、ニュージーランド最大の商都オークランドの複数港湾とその関連施設を管理するオークランド港湾会社「Ports of Auckland Limited.」(以下、POAL)と共に市内繁華街近隣に水素ステーションを整備する事業に取り組みます。本事業を進めていくことで、港湾セクターと周辺のサプライチェーンにおける持続可能性の先導モデルとなることをめざします。また、同国における水素の需要の拡大に合わせて、供給能力の拡充も視野に取り組んでいきます。
ニュージーランドにおける交通の要衝であるウィリ(南オークランド)での水素供給事業
[ニュージーランド ウィリ]
ウィリはトラック交通量が多い産業地帯で、オークランド国際空港にも近いため、航空機メーカー等が開発中で将来的に見込まれる水素航空機の水素需要に応えるにも好都合な場所にあります。
グリーン水素の製造・輸送・利活用に関する実証
[ニュージーランド、フィジー]
フィジーは、太平洋島しょ国の一国として、地球温暖化による海面上昇の影響を強く懸念し、2036年までに発電における再生可能エネルギー比率を100%まで引き上げる目標を掲げ、再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組んでいます。